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「ねぇ、自分で言っておいてなんで俺が訊くことになるわけ? 普通はお前が訊くべきじゃないの? どう見てもおかしいよね?」


「いいじゃない。私、今、すごく機嫌悪いの」


 時坂ときさかは全部俺に丸投げにして、目の前にあるコーヒーを一口飲む。


「二人って……仲いいの?」


 長塚ながつかがいじらしそうな目をして俺と時坂を見ている。この不思議少女は一体どういう解釈をしているのだろうか?


「仲良くないわよ。それ以下と言ってもいいわ……」


 時坂は彼女の問いにこう答えた。それ以下というのはどう表現するのだろうか。そう言われて、長塚はクスクスと笑う。


「そうかそうか、それは悪かったよ……。私って、この世界の事をよく知らなくてさぁ。二人がこんな簡単に会ってくれるとは思わなくて……」


「会ってくれる? どういう事……」


 え、俺は長塚に呼び出されたのか……?


「どうやって、私達を呼んだの? 声は桐谷君だったわよ」


「そうか。こんな簡単な手品、知らないんだ……」


「え? それって……」


 時坂は驚きが隠せず、表情が一変する。


 おいおい。そんな事、プロでも難しいぞ……。


 長塚は人差し指から光を生み出し、目の前に時坂と同じコーヒーを出した。目を疑うように何度も目を擦るが、はっきりと存在している。


桐谷きりたに君、どうかしたかしら?』


「と、時坂の声……。その口調は……」


 長塚は自慢げに俺を見る。


『お前、いちいちうるせぇ。時坂、聞いているのか?』


 それは俺と時坂の声真似だけではなく。本当に本人が話しているかのような完璧にコピーしきった芸当だった。プロでも少しずれていたり、トーンが低い時が分かるが、はっきり言って彼女の今見せた芸当は本物以上である。


 すると、彼女は超能力者なのか?


「お前、一体何者なんだ?」


 いきなり立ち上がって、長塚に怒鳴ってしまった。


「い、いやぁ……。それよりも落ち着きなって……。周りの人、驚いてるよ……」


 長塚は苦笑いをして、俺の服の袖を手で引っ張りながら座らせようとしている。彼女は超能力者じゃない、魔法使いだ。そして、時坂が口を開く。


「そうよ。ひとまず、彼女がおかしな魔法つ……」


「それ以上言っちゃ駄目だよ……。魔法使いは正体を多くの知られてはならないんだよね。これ、常識だから……」


「…………あ、うん」


 一瞬で時坂の口を塞ぎ、笑顔でこれ以上話したら殺すみたいな雰囲気を漂わせていた。


「長塚はどの世界から来た人間なんだ?」


「この世界と同じ……。いや、ちょっと似ているけど、簡単に言えば鏡の世界から来たって言ったら分かりやすいかな?」


「鏡の世界。つまり、同じ世界であり、向こうでは魔法がある世界って事だな」


 未来、時間停止、鏡の世界ときたものだ。それぞれが違う世界からこの世界に集まっている。それも時坂を中心に動いているかのように。


 ……なんだか、ややこしくなってきたな。


 本当に整理しにくい。


 全ての情報が揃わな過ぎて、結局は一から考えるのが面倒になってくる。三点世界と言ってもいいのだろうか。


「結局どうやってその鏡の世界からお前はこの世界に来たんだ?

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