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「私、この三年間を五周ほど回った時気づいたことがあるの。なぜ、人は争いを生むのか。それは人が出会うからよ」
「そりゃあ、学校だからな……」
「そう、家にいるとき以外はほとんど人と接する場所にいるのよ。家族だと、そこまで会話をしないのに」
「寂しい家族だな……」
「あなたに言われたくないわ」
「なんで俺がそうなるんだよ……」
「だから、安全な場所は自分の家、この場所だって、私とあなた、赤の他人同士が同じ空間にいるじゃない?」
一瞬、殺してやろうかと思ってしまった自分がいた。こんな嫌がらせは久々に味わった感じなのだ。そして、女子に言われたのはこれが初めてというわけではない。彼女らは本当に俺のことを嫌っていたからな。違う意味で……。
「赤の他人ねぇ……」
「そうよ。赤の他人、私とあなたはただの協力者であり、それ以上、それ以下でもないわよ」
そう淡々と君に笑う時坂は、なぜか、楽しそうにしていた。
「自分以外は全てが他人よ。家族であってもね。それに男と女が付き合い、結婚してもいつかはどこかで冷めてしまい。離婚し、また、赤の他人へとなっていくの。つまり、神も仏も人も命あるものも生まれてから死に向かっているのよ。この世界は」
時坂は俺とは別の次元に住んでいる人間だと思った。
「生きるからこそ死ぬのか。頭がいかれているな」
俺は窓の外を見ると、綺麗な青空にオレンジ色が色鮮やかにマッチングしていた。
それは綺麗と言ってもよく、美しいとも言えるが、俺はこう思った。
世界の終焉————
これは誰も思わないだろう。
一般的な意見ではないのだから。
そして、今日もまた一日の終わりの鐘が鳴り、カラスの鳴き声が大きくなる。
自分の足元を見ると、その立っている場所が今、自分が歩んでいく道だと思い知らされる。
同校、中央校舎一階にある教室————
「たとえば君が……傷ついて……くじけそーになーった時は……必ず僕が傍にいて、ささげてあげるよ……」
夕暮れの教室の中、誰もいない教室に一人の少女が『believe』を歌っていた。
「時坂沙織……桐谷総悟……。やはり、二人も……」
少女は鉛筆を転がしながら、微笑んで二人の名を読み上げた。
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