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 そう言うと、時坂ときさかはふっと小さく息を吐いた。


 これ以上、気まずい空気になるわけにはいかない。だって、俺が言い出したのに対して納得の意見を述べることができないのだ。


「そもそも宇宙人って人型限定の生き物かしら? テレビや雑誌で見ると、小人や変な生物が主に出てくるわよ」


 確かにそれはそうだ。


 だが、それはそれで一瞬というよりも映像でしかその姿は残らないのであって本当に要るのか分からない。


「よって、宇宙人という生き物は存在しないと思うわ」


 百年後は結局そういった物を信じるではなく、目のあたりにしてしまうと言った方がよいのかもしれない。


 正直、宇宙人と関わると得な事にならない。それは女も一緒だ。どの時代になろうとも女に関わる異性の最後は、悲しみと憎しみを抱き、今後の人生に影響を及ぼすものになるのだ。なんで知っているかって? それは……そういう事なのだ。


 ————女=トラウマ


 動物界でも雄と雌の取り合いは珍しい事ではない。彼らは感情を爆発させ、争っている。


 雄は雌を求めて、雌は雄を求め、この広大な荒れた大地の中をさ迷い続ける。その大地の中で勝ち残れるのは一割程度、つまり現実逃避しない者達の事である。


 そして、彼らは残りの九割によって妨害行為や呪いを植え付けられるのだ。『呪・呪・呪・呪』と、永遠に寄り添う。


 ……本当にそうだったよな。いや、俺ではないが、知っている奴がそうだった。

 動物は面倒な生き物だ。


「そうだな。宇宙人といえば、俺達も宇宙人みたいなものだもんな」


 頭の思考が低下していくせいで言葉を簡単に返す。


 すると、時坂は短く溜息をつく。何がいけなかったのだろうか。俺に心当たりがない。そして、少し暗い表情になった。


「この話は止めない? 考えるほど、一体何なのか分からなくなるわ」


 そういった後に、足りなかった分の言葉を付け加える。


「結局は命がある者はなんで存在するのかは最初に命として存在したアダムとイブ訊いた方が早いわよ」


「無理があるだろ」


「神はいると思えば、いつかは出会えるのかもしれないわよ。なんで、神社は存在すると思う?」


「それは昔、その神様がいたからじゃないのか?」


 なぜか、神様の話に話題は横にいく。


 日本の神は本当に存在したのかも怪しく感じているが、一つの神社に六柱もいるというのもおかしな話だ。


「……神は信じる者、信じない者もいるからな。難しいだろうよ」


 頭痛が走り、俺の額から汗が出てきた。ズキズキと痛みが走る。


「つまり、あなたの答えとしては?」


「ノーコメント」


 時坂の質問に即答すると、「ふーん」とにやけてこっちを見る。


「結局はどちらの意見も本当の事を証明することが難しいのよ。だって、この世には霊能者とかいるくらいだから、それは難しいものだわ。私達人間は人の話を信じすぎるところもある。だから、小さなことでも争いが起こるのよ」


 時坂は小さく席をした。


 人を信じてはいけない。そんな事を人からは習わない。人を信じろというのが、世の末だ。結局騙し騙しは騙し騙しみたいな結局分からない言葉である。俺が考えたわけで教訓ではない。


 きっと、時坂が俺を騙そうとするのなら、俺はその騙しに対して、本当に信じてしまうのだろう。


 その先が想像できない。

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