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「『超常現象部』あほくさい部活だな。普通の文芸部十分だろ」


 百年後の未来の俺があほくさいと言えるのは、この時代はないものが多く存在しているからだよ。だって、百年で日本は大きく変化していく。誰もが予想できなかった世界が少しずつ広がっていったのだ。


 俺の反応に対して時坂は呆れたように目を閉じた。


「……んっ、ん。それもそうね。表向きは文芸部として活動するつもりよ。馬鹿じゃないの?」


「ねぇ、俺を馬鹿にした?」


「してないわよ。それはあなたが私をそう思っているからそう聞こえただけよ」


「いいや、絶対に言った。ならさっきの言葉を思い出してみろ! 俺はそこまで馬鹿じゃない」


「『そこまで』ということは少し合っている事よ。あなた、認めているじゃない。言葉の使い方は考えた方がいいわよ。頭脳はどうやら低いようね」


 ————本当に嫌らしいところをついてくる。この女はそんな細かいところを人の弱みをうまく利用してくる。解せない……。


「それに今、話すべきことはこんな事ではないわ。今後についてよ」


「こんな事って、まあ、それもそうだが……」


「もしかすると、私とあなた以外にも違う現象、体験をしている生徒はいるはずよ……」


「結局、過去の時代の方が未来よりも面倒な環境じゃねぇか……」


 すると、時坂は深刻な顔をして俺を見た。


「あら、そんなに百年後の世界って便利な物なの?」


「この世界よりかは遥かに進化している。車は空を飛び、そして、日本、世界中が常に前へと進んでいく。こんな感じだ」


 嘘ではない。さすが俺、未来から来ただけの事はある。


 今、手元にある眼鏡はこの世界で言うとパソコンや携帯電話の役割を果たしている。


 時坂は「はぁ……」と溜息をついた。


「なんだか、面白くなさそうな世界ね。すべてが便利になるということはすべてが不便になるという事よ」


「適当な事を言っているような気がするが、筋が通っている……」


「便利になるということはどこかに欠点があるという事よ。そして、便利ではない事は改善の余地、成功への可能性が残されているということ。つまり、その世界は少しずつ止まりつつあるという事であると、私は仮説を立てるわ」


 そう言われとそう思ってしまう。時坂は伊達にこの三年間を繰り返してきたわけではない。可愛いわりには、面白いことを言う。


 ……それにしてもやはり、こいつは苦手だ。


     

 俺が逆に言えば、こんな世界を全て創り変えたいってね……。

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