3
俺はこの少女に用がある。
一年六組、
一度、会話をしたことがあるがそれ以降話したことが無い。まぁ、俺がただ彼女の会いに行かなかっただけだ。
西高には普通科5クラスの他に理数科が一つ存在している。理数科は数学などの理系科目の得意生徒が集まっているとかそう言った理由ではなく、ただ、勉強ができる生徒が集まっているらしい。
彼女はその理数科に所属している生徒である。俺は普通科。天と地がひっくり返るくらいの差だ。
彼女の容姿は、それはこの学校において五本の指に入るくらいの美少女だと言われている。
俺にとってはそんなくだらない情報など必要ない。
そして俺は、この世界に存在しないはずの未来少年である。
だから、彼女には色々と聞きたいことがある。それは何と言えばいいのか。説明するのが難しく、簡単に説明すると、頭が混乱になるから今はやめておこう。この部屋は俺にとっては必要である。
「あのなぁ……。俺は一年三組
俺は壁に寄りかかって腕を組み、右足の足の裏を壁に当てながら言った。これで名前を言うのは二回目だ。
「もうそろそろ覚えてくれたっていいんじゃないのか?」
本当にこの女は疲れる。面倒くさい。
「だって、あなたは私にとっては二度目の人じゃないもの。もう、その名前は聞き飽きたわ。耳が痛くなるほどね……」
俺の自己紹介を何度も聞いたような言い癖で、時坂はその独特な毒舌が冷たすぎる。
すると、時坂はゴミを見るような目で俺を見る。そして、その鋭い瞳が俺に対してダメージを与えてくる。息が苦しい。さっきまでとは別格だ。
「それよりも扉を閉めてくれる? 風が入ってくるんだけど……」
「ああ、そうだったな」
————怖え……。なんなんだよ、この女。本当に同級生なのか?
俺は本当にこの部屋に留まってもいいのだろうか? そう、頭が時坂を否定し続ける。こんな感情は今までなかった。
俺は一体何をしているんだろうか。
こんな所でくすぶっている暇なんてない。
だが、時坂は俺が思っている以上に警戒心が強いらしい。今にも噛み殺そうと狙っている。
俺は彼女の近くにあった椅子に座った。
俺がそわそわしているのか、時坂は苛々しながら、続きを読もうとしていた本をぱたんっと勢いよく閉じ、そして、近くに座っている俺に向かって睨んだ後、呆れたかのように溜息をつき、口を開いた。
「……この世界が何度も繰り返されているってあなたは信じる?」
「世界が繰り返されている?」
「そう。この世界が何度も繰り返されている。では、なぜでしょう?」
この世界が繰り返されているだと……?
まはや意味が分からない。時坂の言っていることが分からないのだ。この緊張した雰囲気の中でチクチクした何かが自分の心臓を貫こうとしている。俺が時代を超えたようにそう言った不規則な現象が起きているとでもいうのだろうか。
俺は考えた中で汗が流れているのにも気づかず、ただ、時間だけが過ぎていく。
「それは非科学的現象って事か?」
「少し似ているわ」
少し似ている? そんなファンタジーな事があるのか?
人のこと言えない。
————となると、彼女の妄想、あるいは何かの影響を受けた中二病なのだろうか。
だが、俺も時々そんな事を考えては日記や小説を書いていたことがある。それも遠い昔の話。繰り返される世界となると、エンドレス、ループ、リセット、コンティニュー、様々な単語が思いつくばかりだ。
だが、それを連想させてもやはり思い浮かばない。世界の構築が彼女を中心としているのなら彼女に原因がある。
「それはリセット、そして、コンティニューか」
「ふーん、何を連想させたの?」
時坂は、机に肘をついて体を前に傾ける。
「リセット、つまりやり直しという意味であり、コンティニューはセーブした場所から始まる。つまり、これを繰り返せば世界は繰り返されているということだ」
なんとか、ゲームの知識を生かした俺は、自慢げに話した。まあ、多少の事は目をつぶってもいいとしてもつじつまは通る。
これで時坂も納得してくれるだろうが、小さく息を吐いただけ。
「三十パーセントは合っているわ」
……らしい。三十パーセントということはその七十パーセントを見逃しているということだ。答え出せよ。答えを……。
「なるほどね。俺の論点に欠陥があるという事か……」
俺は再び、苛立ちと面倒さに耐えながら考え始める。未来の俺が過去の人間に頭で負けるはずがない。
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