シナリオ投稿サイトをいくつか比較してみる
オリジナルシナリオを書くのであれば、できる限り多くのシナリオを読んでおくことが好ましい。ただし、「一度読んでしまうと大体の場合は PL として参加できない」という絶大なペナルティを勘定に入れないのであれば、という条件付きだが……
もちろん「オリジナルシナリオを書くのであれば、できる限り多くの〇〇〇〇を△△△△おくべき」の "〇〇〇〇を△△△△" なんて無数にある。そのなかでできる限り多くのシナリオを読んでおくべきを今回は取り立てて主張したい。あなたのスペシャルでスペリオールなアイディアを実運用可能なものに落とし込むための手段を様々に考える手助けになるからだ。
また、他の人にとってそれを手助けする手段としてシナリオを公開することも好ましい。フィードバックを受けたり他の人へのフィードバックを提供したりできるからだ。
というわけで、シナリオ投稿サイトを今回はいくつか紹介する。利点・欠点あるので以下の4項目をそれぞれ★1~5で評価してみる。
読みやすさ……投稿したシナリオがさしたる工夫もなく容易に読みやすくできるか否か
自由度が高すぎるとそれだけ工夫がいるということなので低くなるかも
自由度…………投稿したシナリオを表現する際に自由自在に表現できるか否か
星が多いと編集しやすいがとっつきにくくもなるだろう
感想の投稿……感想の投げやすさ。フィードバックの受けやすさ、ともいえる
♥や★やいいねを投げられたり、コメントできたり SNS 連携できたり
探しやすさ……他の人が投稿したシナリオを探せるか否か
そもそも件数が多かったり、タグ検索できたり、
目的外のものがひっかかりにくかったりすると多い
scenarch
http://scenarch.com/
読みやすさ……★★★ (単純な書き方では苦しいが工夫しやすい)
自由度…………★★★★ (マークダウン記法が使える!!!)
感想の投稿……★★★★ (♥およびコメントが使える。)
探しやすさ……★★★★★ (後述。最強の一角かと)
しょっぱなそれかよ、という気もするが決定版。
学習コストが低いわりに表現力があるマークダウン記法が使える。それを使えば誰でも読みやすいシナリオをわずかな工夫で書けるのは得点が高い。マークダウン記法を支援するためのエディタ付きなのも良い。
投稿には要アカウント。ちょっと面倒。
シナリオには概要の解説を付けられる。何のシステムに向けて書いたのか、難易度、推奨人数、プレイ時間の目安をデフォルトで付与ができる。概要の説明文も添付可能。タグも付与可能。
感想の投稿は♥を用いた投票とコメントに対応しているので気軽に投げるためには前者、フィードバック等をつけたい場合は後者が使える。Twitter に即座に投げることもできる。
だが、そんなことよりも検索がすごい。上述の概要に記載された要素を指定した上で検索できる。検索結果はタイトルと概要の説明文、システムが見える状態で確認できる。人によってはよっと難度や時間も出してほしい気もするがそこまでやると過情報かもしれないのでこんな所だろう。
さらに、外部サイトのシナリオを掲載できる点が強い。外部サイトに掲載したシナリオをガンガン掲載していくことで外部サイトを横断したシナリオ検索エンジンとしてこの scenarch というサービスは機能するのだ。
シナリオ投稿サイト単体としてみた時はマークダウンが使えるとはいえいくつか課題が残る、と評価する方はいらっしゃるだろう。ならば他のサイトに投稿した上で scenarch に登録だけすればよい。そういう使い方もできる以上、現時点で最強のシナリオ投稿サイトと言えるだろう。
キャラクターシート倉庫 の TRPG 汎用シナリオシート
https://character-sheets.appspot.com/scenario/
読みやすさ……★★★★ (テキスト出力してみよう。)
自由度…………★★★★ (限定されているが必要な記述は揃えやすい。後述の機能も併せてかなり強い)
感想の投稿……★★★ (感想投稿フォームは用意されており SNS 連携もある)
探しやすさ……★★★★★ (数は圧倒的に多い。すごい。すっごい。)
シナリオ投稿サイトとして最王手の一つか。アカウント作成なしで投稿可能。
テキスト出力したときの読みやすさがいい。単純で良い。表現力はさほど高くないが困らないように整形されるので十分。書き手のコストと読み手の読みやすさのバランスは最高クラスか。汎用シートなのでそこまでの圧倒的な読みやすさがあるわけではない。
記述も色々とやれて痒いところに手が届く。装飾についてはデフォルトでは残念ながらやれない。だが、実はデータを json で取得できるのでこれを利用すれば好きに装飾できてしまう。
http://sheeprogramming.iku4.com/Entry/106/
流石に json で取得して整形して表示はハードルが高いと感じるので★5とはしなかった。
感想は投稿フォームが存在し、ツイートボタンもある。単純な投票ボタンはない。フィードバックを送るには十分な感じ。
検索機能の痒いところに手が届いている感じはすごい。私としてはサービス単体での検索機能はここが最高だと思う。
タグこそないが検索結果にはシステム, シナリオタイトル, 想定人数とプレイ時間、そしてシナリオ概要の前半部分が表示されるようになっている。見やすい。
ただ、システムの表記が統一されていないのはちょっと厳しい。
キャラクターシートの管理でお世話になっている方も多いであろうサービスであり、どんどん使っていける。json を使った外部連携も含め、お勧めの一角である。
NIGHTMARE / CrowD
https://nightmarecrowd.firebaseapp.com/
読みやすさ……? (まだシナリオの投稿がない以上評価は難しい)
自由度…………? (テンプレートはただのテキストファイル。ただ、投稿形式はテキストファイルには限らないようだ)
感想の投稿……★★★★★ (掲載シナリオの利用条件が "シナリオを使用した後に「作者にシナリオやアクトの感想を送ること」" であり最強)
探しやすさ……? (投稿がない以上何とも言えない)
このカレンダーの五日目にライアーノーズさんに紹介いただいたトーキョー・ナイトメア専用のシナリオ投稿サイト。
記事はこちら。 https://note.mu/liarnose/n/n979550bebfc7
現時点で投稿がないのでちょっと評価が難しい。
シナリオはどう表示されるんだろう。テンプレートを使って書いたらいい感じに装飾されるんだろうか? サンプルを開くとちょっと装飾されている感じがあるのでいい感じに整形されるのだろうか。
自由度についてはテンプレートがあるのでいい感じに書けるが別にテンプレートを使うことは MUST ではないようなので色々やれそうである。掲載はサービス管理者がやってくれるようだ。
感想について。過剰評価な気もするものの感想文がマストになっているというのはすごい。これくらい大げさなルールの方がいいとも思う。すごく良い。ただ、気軽ではないよね、という言い方はできなくもない。これはちょっと評価が分かれるのではないかと。このサービスの評価はここに良いね、と思えるかどうかで左右されるのではないか?とすら思う。
私は好きだ。
探しやすさ。まだ作品がない以上評価できない。見たところそもそも検索はないように見える。一覧画面に出るのもタイトルのみ。どちらかというとTwitterに感想を流し、それを見て「いいのでは」と思ったものを使う感じになるのではないだろうか。
この通りだとすれば、欲しいものを探し出すのには向かないが良い感じの作品に出合うには便利なサービスになるのでは。
なお、システムを縛ったサービスであるため「これじゃない!」を引き当てることは少ないかと。
憶測ばかりになってしまい辛い。ちゃんと評価を書き直すためにも誰か投稿して欲しい。
LhzDev
https://yamanee.info/lhzdev/top
読みやすさ……★★★★ (コンセプトが「公式と近い書式のシナリオを、できるだけ楽に」)
自由度…………★★★★★ (マークダウンに近い記法。ただし、痒いところに手が届く記述方法が追加されている)
感想の投稿……★★ (♥を送信できるのみ。コメント機能はまだない)
探しやすさ……★★★ (現時点では登録数がまだまだ少ない。ただ、始まった直後のサービスなのでこの評価は今後覆される可能性が高い)
ログ・ホライズンTRPG専用のシナリオ投稿サイト。要アカウント作成だがTwitterやGoogleアカウントがあればすぐにいける。
えっ、ここまでばっちりな見た目なのになんで読みやすさが★4なの?と思うかもしれない。これは自由度も高いからだ。筆者の感情としては両方とも★5つにしたい位だ。しかし、この記法に混乱する人は少なくないだろうなぁ、と感じたので★4とした。
読みやすさの基準は「さしたる工夫もなく容易に読みやすくできるか」である。ただし、例が提示されている上、エディタも付いているので4はちょっと厳しめの評価だと思う。本当に4なのか?!と問われたら5は私としてはつけられないが4+とは言える。
また、難度を表現する機能やタグをつける機能もある。欲しい表現は一通りそろっている。投稿には要アカウントだが Google や Twitter から即座に登録できる。参入障壁は低い。
記法について。痒いところに手が届くすごさがある。特に他にはない必要な表を表現できる機能があるのは大きい。何もかもを表現できるわけではないがシナリオを書く上で不都合はないだろう。さりとて、不必要に拡張されているわけでもない。
コメントをつける機能は提供されていない。★を付けられるのみだ。即座に SNS にシェアするボタンも付いていない。必要最小限という感じ。
ただ、コメントを書く機会はそんなにないであろう点やシナリオ作者の Twitter なり Google のアカウントは表示されるのでそこに送り付けることは可能。
探しやすさについては本サービスの開始が6日である点からかなりこのサービスにとって不利な評価となっている。投稿がもっと増えれば評価は大きく変わるだろう。
システムを限定したサイトであることから「これじゃないんだよ!」は少ないであろう点や、タグ検索ができる点から評価は今後上がるはずだ。検索結果にはタイトルと作者、タグが表示される。
概要の解説は載らないのでタイトルとタグで目的のものを引き当てる必要がある。ただ、概要の解説はページ遷移なしで読める。タイトルが気になったら概要を読み、ピンときたら詳細を読む、という読み方ができる。情報量が少ない方がゆっくり見れるという人はこの表示はありがたい。
とにもかくも読みやすいものをちょっと頑張れば提示できる。ログ・ホライズンTRPGのシナリオならここ一択と言われるのでは。
pixiv
https://www.pixiv.net/
読みやすさ……★★★ (可もなく不可もなく)
自由度…………★★ (挿絵が使えてページ分割もでき、ルビも振れるが TRPG 向けにはちょっと足りない)
感想の投稿……★★★★ (コメントもいいねも SNS 連携もある。十分)
探しやすさ……★★★★ (そもそもシナリオ投稿専門ではないだがいかんせん数が多い)
シナリオ投稿されるサイトとしては筆者の感覚としては最王手か。scenarch からも多くのシナリオがリンクされている。投稿には要アカウント。
読みやすさについて。小説投稿機能を使ってシナリオが投稿されている。章タイトル付け、改ページ、ルビ、挿絵、外部リンクなどが使える。TRPG のシナリオとしては少し不足気味と言わざるを得ない。PDF 出力して印刷したりできるのはちょっと強み。
感想の投稿については機能が一通りそろっており、不足は感じない。これは強みだと思う。しかし、同時に特筆すべき機能はない。
探しやすさ。検索性はあまり高くない。タグで検索することになるがタグはまちまちであったりシステム限定のタグがあったりなかったりするので。そもそも TRPG のシナリオ投稿サイトではないのだからしょうがない。そんな関係でいい感じにヒットさせられるかは微妙な所。
ただし、掲載量が多いのは明らかに強み。ひよこが推す scenarch とて全てのシナリオが掲載されているわけではない。pixiv で情報の海に飛び込んだ方が見つかることもあるだろう。
Wiki
wiki 全般なので特に URL は出さない
読みやすさ……★★★ (管理者の技量と投稿者の技量に大きく左右される)
自由度…………★★★★★ (管理者次第だがかなり自由はきく。ただし管理者次第)
感想の投稿……★★ (Wiki の機能でついていればつけられなくもない)
探しやすさ……★ (よほど大きく育てないと無理)
古き良き文明。TRPG や特定システム専門の Wiki もちらほらあるだろう。要アカウントか否かは管理者次第。
読みやすく書くのは難しい。Wiki 毎に独特な記法があり、マークダウンに近い記述力を持つが、使いこなすのは難しい。うまく使いこなせばそれなりに読みやすく書ける。
自由度はかなり高い。自前で用意した Wiki ならば CSS やらスクリプトやらを導入してがしがしやりたいことをやれる。HTML を直に記載できる所もある。ただし、管理者が自分ではないのならば権限はある程度制限されるだろう。
工夫して頑張ればかなり読みやすいシナリオを書けるはずだ。
感想の投稿はコメント機能がついている Wiki を使えば可能。それ用の機能ではないので感想送信機能がついているものほどいい感じとはあまり感じない。
探しやすさは Wiki 単体では弱い。サービス単体で探しても量がないので横断検索したくなる。Google 検索などでうまくヒットすれば、というところ。
自分好みに Wiki の設定をいじり倒してどんどん書いては scenarch に掲載するという使い方があるので決して無しではない。
ブログや自前のサイト
読みやすさ……★ (「工夫もなく容易に読みやすくできるか否か」が基準なので最低)
自由度…………★★★★★ (ええ、そりゃあ最高でしょうとも……)
感想の投稿……★ (感想投稿フォームとかは全部自作してください)
探しやすさ……★ (SEO 対策から始めましょう)
自前ですべてを用意する。難しいです。アカウントがいるというかなんというか。
読みやすくするには自分で頑張らなければならない。技量がないならやめておこう。この場合の技量はデザインセンスと HTML/CSS (ないしはさらに JavaScript) の技術力を指す。
自由度はあなたの技術力次第なのでどこまでもどこまでも行ける。上述の全てに勝るだろう。
感想の投稿も「作れば」自由自在だが作るのが大変なのはいうまでもない。
Wiki と同様、検索対応を頑張らないといけない。scenarch に登録したり、キャラクターシート倉庫に入れたものを成型して表示するなどして検索はそれらに任せてしまう、という手もある。
筆者としては現時点ではキャラクターシート倉庫と scenarch の二強に落ち着くかと思っている。ただ、特定のシステム専門のシナリオ投稿サイトが出てきているのは興味深い。そういったものの方が見た目の表現を追求しやすい。
「各々が好きな場所でシナリオを掲載し、scenarch に登録する」だと便利そうだな、と筆者は考えている。
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2020/10/18追記
UL-N◎VA -超軽量級アクトスタイル-というサービスを紹介頂いた。
トーキョーN◎VAの2時間程度で終わる軽量シナリオのみ投稿できるシナリオ投稿サイトらしい。現代の TRPG ならではのシナリオ投稿サイトといえるだろう。
http://dappleox.web.fc2.com/nova/NeuroCrowD/UL_NOVA.html
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