エタるキャンペーンのデザインパターン

この記事は TRPG なんでも Advent Calendar 2018 への寄稿記事です。

https://adventar.org/calendars/2901


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  キャンペーンの完走は正直かなり難しい。もしもあなたがキャンペーンを完走した経験があるとしたら。あなたが PL だろうが GM だろうが誇ってよいと思う。私個人としては履歴書に記載できるとすら思う。


  キャンペーンを完走するコツなんて私は語れないので、キャンペーンを完走しないコツをがりがり書いていく。こういうのを「アンチパターン」というのだが、外でこの単語を出したら通じなかったことがあってショックを受けたのでタイトルは「エタるキャンペーンのデザインパターン」とする。デザインパターンも多分通じないけど。


  なお。以下の1つや2つに当てはまるからとてその卓がハズレといえばノーだと私は思う。ないし、たくさん当てはまっていたとしても完走できないだけで楽しい卓ではあるかもしれない。あくまでキャンペーンを完走しないコツとして書いている。



1. この著者のように時間を守らない人がいる


  私のようなやつだ。この記事、6日の記事なのに筆を執ったのは7日だ。もちろん、言い訳は無限に思いつくのだがこの記事を楽しみにしてくださっている方 (いてくれたら私はうれしい) にそんなことはあまり関係ない。


  キャンペーンは長い付き合いとなるので日程調整がたくさん発生する。ライフスタイルが1年通じて変わらない TRPGer はほとんどいないだろう。誰にだって「忙しいけど頑張って日程捻出したぜ」という時期が発生する。学生さんならばテストがあるし、バイトがある場合もあるだろう。社会人なら納期とかある。そんな中であなたが必死こいて捻出した時間に平然と10,20分遅れてくる人がいたらよろしくない。


  一度や二度ならそういったことがあってもまぁ、許せるだろう。しかし、回数が重なってくるとどうだろうか? ないし複数人いたら? そんな中で忙しいあなたは穏やかな気持ちで卓を囲みキャンペーンを楽しめるだろうか? 私は正直なところそこに Yes と答えられる寛容な人ではない。


  筆者がそもそも記事遅刻しているし、筆者も遅刻したことは幾度かある以上あまり強い口調では書けないかもしれない。ただ、こういう記事は自分の事は棚に上げて書くべきだ。時間を守らない人がいるとキャンペーンはエタりやすい。


  時間を守らない、に関連して日程調整に返答しない非協力的な人がいる卓も完走は現実的ではない。長期にわたって日程をすり合わせて実施するというのは難しいのだ。


  完走を目指すならスケジュールには厳しめになる必要がある。



2. 設定を詰め込みすぎた


  キャンペーンとなるとやはり単発では表現できない内容をやりたい。こう、巨悪が世界を狙っているが何らかの難しい事情であの NPC 達はそれに立ち向かえず、PC 達はそれに立ち向かうための特別な力を持っている。PC 達を助けるのはいずれも魅力的な NPC であり、それが複雑に絡み合って PC 達を偶然のように見える必然へ導いていく。PC は PC で各々が複雑で重厚なバックグラウンドをもち、乗り越えなければならない過去がある。キャンペーン中でそれらはひとつひとつ乗り越えられていき PC 達は戦闘力も人格的もキャンペーン開始直後とは比べ物にならないくらい成長して最終話を迎える。


  魅力的かもしれないが、こんな話をハンドリングできる人はあまりいない。小説とは違い TRPG は登場人物がメインライターにとって想定外の動きをする点も考慮しなければならない。GMをメインライターと読んでいいのかは意見のわかれるところだろうけど。


  いきなりこれを目指すと徐々に発生した矛盾に耐えられなくなって GM は次のセッションの日程を出せなくなる。


  設定はゆるめにし、後からの変更に耐えやすいものにすると良い。PC が家出娘ならなんで家出したのか程度は決めておき、実家の設定はおいおい決めるなど。当面の目的さえ決まっていれば割とキャンペーンは続く。また、連続性がある話でなくとも同じキャラクターで単発の話を続けていれば徐々に方向性が決まってきたりして勝手に巨悪に立ち向かうハメになったりするものである。


  無論、最初から回せそうな構想のキャンペーンシナリオがあるならばそれをやるのは妨げられるべきではない。ただし、その場合も路線変更を余儀なくされることを前提に変更余地を大きく残して作られていることが望ましい。


  変更に耐えられる柔軟な、ないし曖昧な設定を持ち込むとキャンペーンは続きやすい。



3. 参加者に生活が大きく変わる気配がある


  筆者が就職していつも思うのが「もっと学生時代にセッションしておくべきだった」である。学生時代と違ってサプリメントを買うお金はある。お金は偉大だ。しかし、学生時代と違いセッションをする時間がない。帰宅したら早くて21時だし。

  筆者が結婚していつも思うのが「もっと独身時代にセッションしておくべきだった」である。独身時代と違って一緒に卓を囲んでくれるかもしれない妻はいる。妻は偉大だ。しかし、独身時代と違い休日は自分だけのものではない。妻は外出好きだし。

  筆者に子供が生まれていつも思うのが「もっと親になる前にセッションしておくべきだった」である。子どもが生まれる前と違って大きくなったら同卓してくれるかもしれない。成長は偉大だ。しかし、子どもが生まれる前と違って朝も夜も大きな制約を受ける。休日は子供は外に連れ出さないと怒るし。


  ライフステージが1つ変わるごとに卓を囲みにくくなる理由がどんどん増えている。きっとまた別の何かで「もっと〇〇〇〇にセッションしておくべきだった」が増えるのだろう。ライフステージの変化が間近な人がメンバーにいるならばよくよく考えた方がいい。その人への対応がないと卓は囲み難くなり自然とキャンペーンはエタる。対応が日程調整へのさらなる工夫なのか、キャンペーン途中離脱なのかは当人達次第だろう。


  キャンペーンが想定する期間内にライフステージが進んだりしない人だけで囲むのは1つのいい手だと思う。ただし、卒業はともかく結婚や出産は急な話なのでこればっかりはしょうがない気もする。その場は祝福し、落ち着いたら再開とかも悪くはないかもしれない。


  ライフステージが当分進まなさそうな人と卓を囲もう。ないしは、進んで難しくなったらどうするのか考えておこう。


  ただ、子連れでオフセはやめよう。子供はダイスを平気で口に入れる。



4. 人間関係がしんどい


  同卓者の関係が大きく変化するとキャンペーン継続は厳しい。誰か一人がやらかしていられなくなった、なら途中離脱とし欠員確保という手はある。しかし、一度に2, 3人を巻き込むような人間関係の変化だったりすると対処不能だったりする。


  10年来の関係で卓を囲んだり、逆にゆるめの卓以外接点がほぼない関係で卓を囲んだりするとこういう時代は避けやすいかもしれない。ただ、これは絶対の回避策はないのが苦しい。


  おそらく10年以上TRPGをやっている人(二十歳をなってないことはほとんどないでしょう)に酒を飲ませたら生々しい話を色々語ってくれるだろう。幸いにして私はほとんど語れないが、経験がないわけではない。


  恋愛関係、三角関係、破局……とか。


  関係の距離感に気を使おう。ないしは使わなくて良い人と卓を囲もう。


5. 地雷回りについて共有が不能である


  地雷は完全な回避がまず不可能だ。


  予想不可能なところに地雷を持つ人はそれなりにいる。時間に無頓着な人がそもそもだめとか、設定の過積載がそもそもだめとか、そういう人もいる。過去のその人の経験に基づいて何かがダメという人もいる。


  それらについて事前に共有されたところでさじ加減がわからないこともあるので結局手探りである。


  幸いにして二回目を踏まないための手段はある。踏みぬいたら「それは無理」とはっきり伝えてしまうことだ。


  地雷の完全な回避は事実上不可能と受け入れることと二回目を践まないように共有ができる環境がないのであればいつでも継続は困難になるだろう。


  「それ、無理です」と言えない環境でのキャンペーンはやめておこう。



  実体験に基づきざっと列挙してみた。繰り返すがこれ一つでも当てはまるなら全くもってアウトの卓、というわけではない。しかし、避けた方がキャンペーン完走率は上がるだろう。

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