夢とニューチャレンジャー
なんやかんやで寝て気がつくと、いつものマンションに川の字で3人寝ていた。夢の世界では見慣れているフミカはいいが、反対側で寝てるのは金髪の文乃さん(だと思われる)
「おはようございます、ユウさん」
「あ、うん。ところで文乃さんの髪の毛の色なんだけど」
「文乃さんの昔の髪の毛の色が金髪だったんですよね。年とともにくすんで今の色合いなってしまったのですけどね」
フミカがそういって、俺をまたいで文乃さんのそばへいく。ぺちぺちと寝言(夢の中でまで言うとはすごいと思う)をつぶやくその頬をたたく。顔をしかめた後に、あと1時間とのたまうために、フミカは一度離れるとピコピコハンマーを取り出した。
ぴこーんぴこーんぴこここーん
「もう、ひどいわぁ、そんな叩いて」
「だって起きませんでしたし」
「ところでここどこや」
「ここはアーディアルハイドです」
「あーでぃあるはいど?」
「アーディアルハイド」
なんだそれはという顔でこちらを見られても困るのだ。
「この夢の世界の空間の名前だな、フミカが名付けた」
「フミカが名付けたんか」
「名前をつけないと、考え事する時に不便なんですよ」
「せやか、それでここがドッキリでのうて、夢の世界という証拠あるんか?」
「はい、どうぞ」
何も持っていない彼女の手が、一度握り込み、手を開くとそこから手鏡を取り出して渡す。受け取った手鏡を見た文乃は、自分の髪色をみて、納得したようだ。
「それどうやってやったん?」
「夢の世界なのですから、強い意志があれば簡単ですよ? 私はこの力を夢の世界を改変して蝕むということで、
「兄さんもできるんか?」
「フミカほど発想力もイメージ力も無いからそこまで上手くはないが、ほら、懐中電灯」
自分の手から懐中電灯の光を出すイメージを固めて、それを文乃さんに向ける。
「まぶし、もうええよ、わかったし」
「さぁ、文乃さんもやりましょう、もちろんできますよね」
「そんなこと言われてもすぐできることなんてなぁ……」
そういうと、文乃さんの髪の毛がみるみるうちに伸びていく。その金髪は腰のあたりまでのびると、空中から現れたリボンによってまとめられる。
「ポニーテールですか、久しぶりにその髪型を見ましたね」
「やっぱ、これが一番しっくりくるのよの」
「適応はやいなおい」
「ユウさんだと、
「ユウさんなぁ。なんや自分、さっきと兄さんと呼び方が違うやん」
「そうですね。それよりも、これで夢の世界があることを信じてくれますか?」
「こうなってしもうて信じないっていうやつがいたら、それは紹介してほしいわ」
それで信じないやつが実際いたらそこまで紹介して欲しくはないとふと思ってしまうが、それはおいといて」
「ほな、うちも兄さんのこと、文香ちゃんと同じように呼ばせてもらおか」
「え、それはダメです、絶対ダメです!」
「ダメなんか、じゃあ、ユウって呼ぶわ」
「それならいいですよ」
「一体その違いはいったい」
何やらこだわりがあるらしいが、あまり深掘りすると痛い目に合いそうな気がしてすぐに別の話題をふることにした。
「そういえば、文藻さんはいないな」
「そういえば」
「実は文藻さんは、二人が寝た後にさらっと自室に戻ったで」
「そうだったのか」
「そしたら、起きたら文乃さんが夢の世界があったことをお伝えしてください」
「また難しいこというねぇ。まぁ、言うだけ言っとくわ」
「それで、とりあえずどうする?」
「いつも文香ちゃんとユウは何してるんや?」
「ここで身支度をしたら、ちょっと冒険に」
「何やら面白そうな響きやな、うちもそれ連れて行ってや」
「では準備をしてきますので、絶対に覗かないでくださいね」
「なんや文香ちゃん、見られるの恥ずかしいんか? 別に減るでもないだろうに」
二人がじゃれあいながら、部屋へと引っ込み準備をしにいった。何やらわいわいやっていたが、こちらは先にバルコニーに出て、逆さの摩天楼を見上げた。
いつもと変わらない逆さの摩天楼。そのはずだったが、一瞬だけビルの一つの窓に明かりがともり、誰かがこちらを見ていたような気がした。
「ユウ、うちも準備できたで、どや?」
「これならば何があってもどうにかなると思うのですが、ユウさんからは何かあった方がいいというのはありますか?」
文乃さんの姿を見ると、一言でいえばファンタジー風の格好をしていた。ショートパンツに革ベルトをつけ、へそだしルックのタンクトップ、革のブーツにニーソをしていた。それに金髪が映え、キャスケット帽をかぶっていた。
「なんや、じろじろみて。うちのへそが気になるんか?」
「いや随分と大胆な格好だなって」
「冒険するんやろ? ならこんな風が楽しいと思うんよ」
「そうです、そういうのが大事なんです。ユウさんも見習ってください」
「あ、はい。前向きに善処いたします」
フミカにジト目で見られてしまった。
「それで、バルコニー出てどうするん?」
「落ちます」
「え?」
「落ちたら空に落ちていくので、その先で冒険できます」
「ほんまか?」
「本当、本当」
「ちょっと高いところから飛び降りるのは怖いとうち思うんよ」
「じゃあ行ってみましょうか」
いやいやと嫌がる文乃さんを、フミカが足をさっと払い、膝をかかえあげてお姫様だっこをする。そしてそのままバルコニーから飛び上がり、逆さの摩天楼の方へと落ちていく。それを追いかけるように俺もバルコニーから飛び降り、摩天楼へと落ちていく
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