真夜中の小さな冒険

 深夜、ベッドの上で目を閉じていると色んなことが頭に浮かんできた。勉強のこと、将来のこと、生きてる意味、死んだ後のこと......。


 どうして僕は今生きているんだろうか。どうして人間は生まれたのだろうか。どうしてビッグバンは起こったのだろうか。そんなことを考えていると堪らなく怖くなった。


 みんなはどうやって生きるているんだろうか。何か目標を持っているのだろうか。いい会社に就職するために生きる。いい人と結婚するために生きる。子孫を残すために生きる。とても素晴らしいことだ。


 でも僕には全て逆に思えるのだ。生きているからいい会社に就職する。生きてるから結婚する。生きてるから子孫を残す。全ては「生」が先立つのだ。そうなってしまえばもう生きている意味などない。「生」の後に「生きがい」が来るのならそれは生きがいなどではない。単なる暇潰しにしかならない。すべては死ぬまでの暇潰し。ならば今ここで命を絶ってしまってもいいのではないか。そんな風に考えてしまうのだ。




 ふと息を止めてみた。苦しい。苦しい。苦しい。もう限界だ。息を吐き出してゆっくりと深呼吸をする。


 生きてる。今僕は生きている。息をして、心臓を動かして生きている。そして明日もきっと生きるだろう。明後日も、明明後日も、一年後も、十年後も僕は生きているだろう。意味もなしに。価値もなしに。僕は生きている。誰かが死んだ昨日を。誰かが生まれた今日を。僕は生きるのだ。それでいいんだ。


「生」を実感するのに大袈裟なことはいらない。真夜中のベッドの上での小さな冒険。それだけで十分なのだ。

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