第2話 家族の絆

 父と母と兄と私。

 私の家族はとても仲が良い。

 特に母と私は、友達のような関係を築いていた。


 確認行動は、私の場合、自分で処理しきれなくなると、信頼出来る人間に対して行われた。

 犠牲になったのは、主に母。


 お風呂を例にするなら、


 私は髪洗った?

 体は?

 顔は?

 洗い方はこれでいい?

 洗う順番は?

 このメーカーのもので大丈夫?

 しまう場所はここで本当にいいの?


 などなど、きりがない。


 過量服薬をした後、退院し、家に戻った私は暫く薬を飲まなかった。

 特に処方されなかったし、飲む必要がないと思ったのだ。

 頭はすっきりとしていて、確認行動が一切無い。


 治った、と思った。


 しかしそれは、離脱症状の一歩手前の状態。

 私自身にその時の記憶はあまりないのだが、家族によれば、まず私は寝なくなった。食べなくなった。

 そして、酷い幻覚妄想に襲われた。


『頭の中に七人いてその内の一人が自分を殺そうとする』


 包丁を持ち出そうとする私を家族は必死におさえこんだ。

 何をするかわからない私を、家族は交代で見ながら、私を助けてくれる病院を探したらしい。


 そして、今現在の主治医に出会うことになるのだが、話は簡単に終わらない。


 地獄の扉は静かに、少しずつ開いていき、知らず知らずそこに足を踏み入れた私は、家族を道連れに闇へ進むことになる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る