第4話 八田神村
近畿地方の南に位置する
そんな村に突如ビッグニュースが訪れる。
紫蝶祈祷師自体、特別扱いされるこのご時世、彼は情報番組や時にはドラマにすら出ることのあるいわゆる芸能人ならぬ芸能祈祷師であったため、一躍時の人であった。
村民達は垂れ幕を用意して彼を迎え入れ、最も豪華な旅館を用意、とまさにVIP待遇だった。
九十九は左手、黒江は右手にそれぞれ薄く蝶の染みがあることを確認し、抱き合って涙を流した。同じ紫蝶祈祷師としての苦悩を分かち合ったのであろう。そして、黒江がこの村に数日間滞在するということで、死に目に会えなかった親の墓参りにやっと行ける、と涙を流した。
周りの村人もその気持ちを汲んで、一緒に涙を流した。その込み上げる思いといったら計り知れず、その喜びを句に残したくらいだ。そして、その句を石碑に刻むための作業が開始された頃、九十九はタクシーに乗り込み、片道4時間、母の墓がある実家の村へと発った。
有名人が滞在しているということで、村はお祭り騒ぎだった。
村の子どもによる太鼓の披露、古くから伝えられる伝統民謡、その他数々の催し物が開かれ、そのほとんどに黒江は中心として迎えられた。そしてその全てに黒江は満足し、賞賛した。みんなが輝いていた。
事件はそんな中起こった。
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