第3話 紫蝶祈祷師の苦悩

 紫蝶祈祷師しちょうきとうしの確保は容易では無い。

 そして一度配備されると、そこから移動するには新たな祈祷師を確保しなければならない。

 実際に新たな祈祷師を確保することは困難なため、中には20歳台でとある村に配備され、結局そのまま死ぬまでその村を離れられず親の死に目に会えなかったり、自分が病になっても治療を受けられなかったりなど過酷な環境を強いられる例も存在した。


 しかし、祈祷師への周りからの信頼は厚かった。

 それと同時に祈祷師の信念も強かった。

 紫蝶病患者を救える唯一の奇跡を、生まれながら自分に与えられた使命と捉え、祈祷師達はその任務を誇りに思っていた。


 「紫蝶病裁判」の発端となる事件が起きたのは、そんな最中さなかだった。


 八田神やたがみ村。

 反物たんもので有名な、人口1000人あまりのその村で起きた一つの事件は、いずれ日本を巻き込んだ大論争へと発展することになる。

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