攻略
「ラグナも今の一撃で気が付いただろう。あいつらは軽いんじゃなくて重さを操っている。ブライザさんの法剣に近い特性があるのかもしれん。それを応用してか衝撃も緩和しているようだ」
「なるほど。で、どう攻略する?」
自信ありげなアムの表情。それを見て対策があるのだろうと察した俺が問うと、アムは俺の見てからこう言った。
「手はいくつかあるが、ラグナは自分で考えてみろ」
「なに?!」
(その頭が飾りじゃないなら使ってみろ)
それだけ言い残してアムとリンカーは槍使いに向かっていった。
相手の特性はわかったが対処する方法が思いつかない。斬れば吹き飛び受ければ圧し掛かる。おまけに衝撃は吸収されるとなればどう攻めたらいいものか。
変わらず俺は前に出て攻撃を繰り返えす。今度は雑な攻撃で隙を作らないように集中しながら。
何度か剣を打ち合わせて闘っているうちにわかってきたことがあった。それは、武装兵の実力は特出して高くはないこと。決して弱いわけではないが、どう見積もっても俺と同等以上ということはない。
ただ、軽さによる機動性を生かした素早さと反撃をさせない重い一撃。この戦略で大技がなかなか出せない。
もうひとつは、攻めたり引いたりしているように見えて、実はそうではなく、俺の攻撃で飛ばされて俺が間合いを詰めなかったときだけ攻撃してくるといったパターンを持っている。
(つまりこいつらは)
俺は少し大振りになるほど力を込めて避けられにくい胴へ水平斬りを放った。それを剣で受け止めることを考慮して斬るというよりは打つというようにして大きく吹き飛ばす。そうして武装兵との距離が開いたとき、錬成に時間の掛からない中級法術を使った。
「ロッグ・ウォーラル」
石壁を地面から立ち上げるがその壁は突進してきた武装兵の重い斬撃で斬り砕かれてしまう。
そのとき俺はすでに後方へ飛び下がっていた。この距離が俺に時間を作る。
「エクス・マグナ・ゲイザー」
掲げた手を振り下ろして手の平で地面を力いっぱい叩くと、武装兵の真下から大地のエナジーが吹き出した。
「それが可能性のひとつ」
アムが槍使いと戦いながらそう口にした。
距離を置かずに詰めてくるのは法術を出させないため。現にアムも一度として使っていないのは槍使いが速さとリーチによってその隙を与えないからだ。
大地のエナジーに撃たれた武装兵は剣を突き立てて倒れることを拒んだ。
「ラグナ、法術の選択が甘い。ここは地の力が少し弱い。わたしならファイム・ゲイザーを選択した。だが、ラグナは警戒し過ぎて距離を大きく取ったからファイム・ゲイザーは射程外だったな」
ご名答……。闘いながらも細かく観察していた上にダメ出しのコメントまでしてくるアム。
「なにをしているお前たち。宮廷に入り込んだ賊ごときに後れを取るのか?」
叫ぶというほどではないフォーレス王の言葉は、なにか特別な力があるのか俺の耳にも重く響いた。
その言葉を受けた武装兵はグラグラと揺れながらも杖として体を支えていた剣を引き抜いて構えを取った。
大きなダメージを負ったことで距離を詰められない相手に容赦なく追撃をかける。
「物理攻撃は緩和できても法術をそうはいかないようだな。ファイム・トルネイド」
振り払った腕から巻き上がった風が火炎旋風となって地を駆け抜ける。続けて俺は武装兵を包む炎に向かって跳び込だ。
「ヘビー・ザンパクト」
真上から振り下ろした重斬撃は地面と挟むことによって衝撃の逃げ場をなくし、軽さという武装兵の特性も無効化する。
スポンジのように衝撃を緩和する呪力を超える衝撃で首筋から胸にかけて鎧は亀裂が走り、ついに貫いた。
「おぉぉぉぉ」
炎の竜巻の中で光の飛沫を放ちながら、着地と同時に捻転して力を溜める俺に向かって、武装兵は先ほどのようになにか呪力を纏わせた剣を振り上げる。
「サーク・ストライク」
数瞬早く溜めた力を解放し回転しつつ跳び上がる。法技の力を乗せた法剣が斜め下から斬り上げられ、回転力が生み出す速度と強化された打撃力に武装兵の重さが加わったカウンターが快撃した。
衝撃を逃がすことができなかった武装兵の鎧の亀裂を俺の剣が深く斬り裂き、炎の法術に焼かれて苦しむ武装兵は動きを止めてその場に倒れ込んだ。
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