7 天田乙女
「はじめまして☆ かわいさ
瀬戸先輩がみずからデザインしたキャラクターのイラストをもとに、3Dのアバター制作ソフトで作り上げた『TenYU』ちゃん。
「おお……僕の声を発しながら動いてる。すごい」
なんだか他人事みたいに感心してしまう。
今や3Dのキャラクターをすぐに、しかも無料で作れる時代。
ちょっと前まではそんなソフトやアプリ自体がなかったのに、流行というのは技術の発展と環境整備を何段階も押し上げるものなのかもしれない。
このかわいさ……これが……僕なのか。まったく実感が湧かない。
動画編集ソフトを使いキャラクターと音声が合成されて、ほんとうに「そこにいる」かのようだった。
にしても……
お昼の放送のナレーションとかもそうだし、ラジオドラマのようなものを作るときだってそう。部活動だとずっと話す側だったのに。先んじてVWaverになってるくらいだから当たり前かもしれないけど、いつの間にそんなスキルを……?
僕はもっぱら編集側の人間だけど映像関係はさっぱりなので素直に感心する。
「ああ、
……なるほど、ね。妙に納得してしまう。
確かにカメラとか録画関連はあの人の専売特許的なところだけど。
それ以上に、春日野部長は、里藤先輩のこととなると過度に甘やかしちゃうようなところがあるのだ。
そこさえなければ本当にいい人なんだけどな……
「はっ!? ということは部長は先輩が『Vの者』なことを……!?」
「……知ってるよ。あ、
「あ、うん……でも、部長が。部長はてっきりVWaverのことはあまり詳しくないと思ってたよ。部長からそんな話を振られたこともなかったし」
「あたしがよく天田と話してたからね」
あーそれもそうか。名前とだいたいの中身くらいは自然に耳に残るか。
にしても、だ。
油断していたらすっかりチームワークみたいになってしまってる。
完全に役割分担ができてしまってて、なんならもうデビューして活動してる、みたいな雰囲気さえ漂っているじゃないか。
「……本当にやるの?」
この間里藤先輩からチャンネル開設を迫られたけど……
実のところそれ自体はずっと前にやっている。
というのもNewWaveの仕様上、好きなVWaverの動画内チャットに参加するには、たとえ動画を登録してなかろうと、自分のチャンネルを開設していないといけないからだ。
つまりはソレアさんをはじめとした『推し』のVの者を個人的に追ってコメントするための、完全なる個人用アカウントなのだけど……
ということは、あとは動画を投稿しさえすればいつでもVWaverとしてデビュー「できてしまう」状態なわけで……
「ま、まだ心の準備が……」
「乙女か!」
部室内に響き渡る里藤先輩のツッコミ。う、うん、それは自分で思った。
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