2 「ヤバヤバの志太野坡じゃん」
放送部の2年・
部活動中はほとんど何かしらしゃべっているので、収録の時に黙らせるのがいつも大変なほど。
好奇心旺盛で、新しいものには手を出さずにいられないタイプでもある。
「ねぇ
そう言って最初に僕に『
以来、先輩より僕のほうがどっぷり沼に浸かってしまって今に至るわけだけど……
「そうか~、天田って美少女になりたかったんだ」
「そ、そんな、僕は別に……これはその、単なる遊びで……」
「遊びでそんなに毎日鍵の当番を引き受けたりするかな~~?」
「ううっ……」
「あぁ~~~もう、天田はかわいいなぁ~~~~!!」
あっ、こら機材の前で抱きつくな……!
耳のあたりまで体温が上昇しているのが自分でもわかる。
これが先輩の感情表現なんだけど、いつまでも慣れない。
友人に話をすると「うらやまけしからん……!」と血気迫る勢いで僕に詰め寄ってくるのでアレなんだけど、先輩胸なくてすっごくまな板だから、感触はただただ硬いだけなんだよなあ……。
「ほかにも撮ってるの? もっと聴かせてよ」
あっこら、ヘッドホンを……
僕のことなどお構いなし。
トラックを選んでは再生する、を繰り返す先輩。
「ふんふん……あ、これよく『歌ってみた』でみんな歌うやつじゃん。歌を歌ってもこれだけ女声が崩れないの? ヤバヤバの
ヤバヤバの志太野坡ってなんだよ……
もういいよ、焼くなり煮るなり好きにしてくれ……
一通り聴いた、というところで、ヘッドホンを機材の上に置いて僕の方を見る里藤先輩。もっとイジられるかと思ったら、返答は意外なものだった。
「……コソコソしなくてもいいじゃん。もっと堂々としなよ」
「……へっ?」
絶対からかってくると思ってたから、思わず声が変な上ずり方をしてしまった。
「正直、驚いたよ。あんたの声が、ここまで女の子してるなんて」
「……笑ったりしないの?」
「なんで? ……それとも天田ってそういうのがイイの? イジられたいならもっとイジってあげるけど」
「いや、やっぱいいです」
そう言うと、先輩は「でしょ?」となぜか得意げに笑みをこぼす。
「確かにあたしはあんたをイジり倒すけどさ。茶化していいラインは見極めてるつもりだよ」
せ、先輩……! どうしたんですか急にキャラ変えして!?
ちょっと僕ウルってきちゃったじゃないですか。
見直しました。日頃陰で妖怪ナイチチお化けとか思っててすみません!
「よし、さっそく明日から天田美少女VWaver化計画開始だ! 瀬戸先輩とかきっと喜ぶぞ~~~~!!」
「へ……!? ちょ、ちょっと待ってよ……!」
……やっぱこうなるのね……
前略・お母様。僕の社会的人生は今ここで終焉を迎えたようです。
本当にありがとうございました。
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