Vol.2 休日でも仕事を! ①
皆さーんおはよーございます‼︎
ワタクシ、光里がどこにいるかと申しますと!そう!恭の部屋の前におります!何するかというと〜!?
普通に起こすだけですね。
しかも、寝起きドッキリみたいなノリだけど現在の時刻は12時半だからね 。めっちゃ日が昇り切ろうとしてるタイミングだしね。
更に更に、この時間に起こしてって言われたしね。ドッキリっていうか本当に普通に起こすだけっていうね。
まあ、恭の新刊の原稿が今日が締め切りで朝までやってたっぽいし抱きつきたい衝動を抑えて起こしてあげなきゃね!
そろ〜っと入った恭の部屋はいろんな本がぎゅうぎゅうに詰められた本棚とノートパソコンが一台置かれている机、それとイス。あとはちっちゃいテーブルと普通のベッド。
「いつも思うけど本当に何にもないよね。恭の部屋は」
恭はまだ寝息を立てながら寝ている。そうだ。写真撮っちゃお〜。寝顔フォルダーでも作ってあげようかな。
部屋の窓はカーテンによって締め切られているからフラッシュをたくしかない光里はスマホのカメラアプリを起動し、フラッシュをオンにする。
ふふふ、寝顔シリーズの記念すべき1枚目だ〜!
「ハイ、チーズ」
一瞬フラッシュが焚かれて写真が撮られる。その写真には満面の笑みを浮かべながらピースしている恭の姿があった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「もう恭なんて知らない!だいたいいつから起きてたのよ!」
「光里が部屋に入ってくるちょっと前から。起きようか迷ってたけど階段上がってくる音が聞こえたから黙ってた」
さっき撮った写真を指差しながら怒る光里とは裏腹に笑いをこらえながら喋ってる俺はさぞかし性格が悪いんだろうな。自分で言うのもあれだけど。
「絶対いつか撮ってやるんだから」
「次はもっといい笑顔で映るように頑張るね」
「ほんっと恭って性格悪い!そんなんだから彼女居ないんだよ!」
光里は少し頰を膨らませながら言う。
「そんなん今更だろ」
朝食もとい昼食を口にしながら軽口を叩き合う。
「ていうか、恭。原稿終わったの?」
「ちゃーんと終わったよ。今朝にね」
頬杖をつきながら向かい合う俺を何故かじっくり見た後、おずおずと光里は質問を口にする。
「ねぇ、恭。もしさ、私が
悠真って言う人は光里の彼氏の事だから多分言われたんだろうな。悠真さん大人しそうに見えてやるなぁ。
「なんだそれ。めっちゃ唐突だな」
俺に真剣な眼差しを向けて光里は続ける。
「恭はどうするの?」
真剣に答えないとダメか。まあ、答えは決まってるんだけどね。
「俺は反対はしないよ」
「反対はって事は?」
「もちろん条件はあるさ。大切な俺の姉だからな」
光里はふふっと笑う。
「で?その条件って?」
「光里を絶対幸せに出来る自信があるかどうか、だね」
「全く、恭はブレないね。シスコンか〜?」
このこの〜、と俺の頬をつんつんしてくる光里は、若干の呆れと膨大な嬉しさ、その他諸々が相まったその表情は少しばかりか複雑そうに見えた。
「で?いつ同棲しようって言われたんだ?」
「は!?べ、別に言われてないし!」
「ねぇ?わざとやってる?俺に隠し事出来ると思うなよ?」
俺がニッコリ笑って逃げ道はないと告げると項垂れて白状し始める。
「恭の入学式の日の夜だからおとといの事です」
「ほーん。で、相談しようと思ったけど俺が執筆で忙しそうにしてたから言うにも言えなくて今に至ると」
「ご名答でございます」
こころなしか、光里が小さく見える。まあ、仕方ないか。
「俺が1人でやって行けるかが心配。ってところか」
「うん。なんかごめん」
「いいよ。光里が相談とかするのが苦手ってのは分かってるから。でも、俺的には光里のいいようにすればいいよ」
「うーんー」
光里が不完全燃焼というように頷く。じゃあ、俺は提案をしようかな。
「まあ、うちに部屋余ってるからうちで同棲ってのも有りではあるけどね」
「でも、恭の邪魔になるかもだし。それにお金とかも」
「その俺が別にいいって言ってるんだけど?」
1回目を見開いた光里は小さくありがとと言うと自分の部屋に戻って行った。多分、悠真さんに電話をしているんだろう。じゃ、俺は編集さんのところに行きますか。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「んじゃ、行ってきます」
「行ってらっしゃーい」
今日は3時から編集の武田さんとかアニメ会社の人達といろいろ積もる話をして帰宅。という単純なようで意外と精神的にきつい日がやってきてしまった訳だが。
「あら!恭くんじゃない。こんにちは」
「あ、
このニコニコしたマダムは八代
「えぇ、もうすっかり良くなって今は杖無しでも歩けるようになったよ」
「それは良かったです。そう言えば、一日に4つほどみかんを食べると体にいいらしいですよ。本当かどうかは知りませんが」
「ほんと?じゃあ、買ってみようかねぇ」
と、一昨日見たテレビの内容を完全に受け売りしそのあとは軽く世間話して別れる。
駅に着き、改札を抜けるホームへと上がる階段を登ると
「「あ」」
俺ともう1人の声が重なった。
「琴音じゃん!おそよー。どっか出掛けんの?」
「恭だ。おそよー。そだよ。私も今から
「俺は武田さんのとこ。新刊が仕上がったから届けに行くところ。あとは積もる話をして帰るつもり」
「そっか。じゃあ、一緒に行く?」
「お、おう。行くか」
手を後ろで組み、上目遣いで琴音が俺を見てくる。
多分こいつの事だからわざとやってるんだろうけどまだ高校生活2日しか経っていないのに、既にクラスの男子のグループで上位に名が上がっているに相応しい破壊力だ。全くけしからん子だ。
「にしても、茅野先生が行き詰まるとは相当手強いシーンなのかね?」
「私をなんだと思ってるのよ。まあ、そんなに書いたことないかな。経験したことないし」
「で、なんのシーンなの?」
やっと来た電車に乗りながら琴音に聞くとやっとそこに来たかとでも言いたげな笑みを浮かべた。
「デートのシーンだよ」
「へぇ、デートのシーンか」
俺が動揺することを期待したか。だが残念だったな。そんなことで動揺する俺ではないぞ〜。俺がどれだけ小説を_____
「やっぱ、結羽の幼馴染みなだけあるか〜」
「え?なんで結羽?」
「え?」
「え??」
え、何この沈黙。琴音なんか(えー。うっそぉーん。なんでぇ〜?)みたいな顔してるし。
「きょ、恭?まさか気付いてないとか言わないよね」
「さっきからなんの話ししてんの琴音。俺にも分かるようにせつ__
「な、なんでもないなんでもない」
ワタワタと手と顔をブンブン振る琴音にクエスチョンマークでいっぱいの頭で押し切られるがままに「お、おう」と返す。そのまま、他の話題に移り、電車に揺られ、2人は編集社の最寄り駅で降り、まだ時間に余裕のある琴音は近くのアニメショップへ行くらしいのでここで別れる。
それじゃあ、行きますか。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「あ、
「あ、五十嵐先生でしたか。武田はおそらく会議室4で会議しているので……あ、ちょっとお待ちください」
「分かりました」
この受付をしている方は田中美樹さん。中学時代、初めてここを訪れた時色々教えてくれた人だ。確か歳は20代後半だった気がする。多分。眼鏡をかけ、いかにも仕事ができる女性って感じの容姿で可愛いと言うより美しいの部類に入るような見た目だ。
「武田から『会議してるからそこに来い』との
「有難うございます」
一礼してからエレベーターホールへと足を向ける。
んー、会議中なのに会議室か。今ちょうど終わったから見たいなあれか?まあ、なんにせよその場の雰囲気とノリでなんとかしよう。
チーン、とエレベーターの着いた音がして入ろうとした時、目の前に武田さんの顔があった。
「うおぉぉ!?」
「キ、キザハシ先生!?ちょ、ちょうど良かった。早く乗って!」
武田さんはそう言い終わると俺の腕を引っ張ってエレベーター内に引きづり込む。
「ちょ、武田さん!?どうしたんですか」
「俺はこの時をずっと待ってたんだ。あの空気に耐えきれなくてな。今は俺の上司が繋いでる。早く行くぞ」
「は、はぁ。まあ、分かりました。その様子だと走る感じですよね。会議室4って何処ですか」
「エレベーターホールを出て右に曲がって二つ目の角で左に曲がった後そのまま一番奥まで行ったあと左に曲がって右側の手前から2番目の部屋だ。覚えたか?行くぞ」
「覚えましたよ〜。走るのは自信あるんでさっさと行きましょうか」
そのままエレベーターが着くと武田さんを置いて走り出す。まあ、行く道は覚えたからね〜。こう見えても記憶力には自信あるからね!
「到着だね。音立てないように走ったからちょっと遅くなったけど…にしても遅いっすね」
「うるせえ。ほっとけ」
悪態をつく武田さんは息を整え、緊張しろよ。とだけ言うと、ガチャリとドアを開け中へ入った。社会人ってすごいね。さっきまでゼーハー言ってたのにもう切り替えてる。
俺が営業スマイル半端ないって、と余計なことを考えていると武田さんはそれを察したのか早くしろ。と言う視線を送ってくる。
俺も営業スマイルで行きますか。
部屋に入ると
うん。これは逃げ出したくもなりますね。
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