第261話 最後の夜に仲良しできるらしい。

 アマアマ部屋での最後の日だと言うのに、とうとう夜になってしまった。

 101号室の風呂に入るのも今日で最後だ。


 僕は肩までお湯につかりながら、この寮での1年間を思い返す。


 初めてネネコさんやポロリちゃんのパジャマ姿を見た時は、その可愛らしさに感動し、天ノ川さんのパジャマ姿を見た時は、目のやり場に困った。(第8話参照)


 甘栗祭、つまり僕の誕生日には、寮の大浴場をアマアマ部屋の貸し切りにしてもらって、ルームメイト達との混浴を楽しませてもらった。 (第156話参照)


 12月の寒い夜に4人で流れ星を見た後、3人が待ちきれずに、ここに入って来た時の事も、つい最近の事のように、よく覚えている。 (第190話参照)


 そして、クリスマスイブに、僕はネネコさんと2人で、この風呂に入り、念入りに体を洗った後、童貞を卒業させてもらったのだ。 (第192話参照)


 お陰様で、この寮に来たばかりの頃と比べて、僕は身体的にも精神的にも、だいぶ成長できたような気がする。


 僕がオトコとして、こんなに成長できたのは、僕のカノジョになってくれたネネコさんのお陰であり、僕を本当の兄のように慕ってくれたポロリちゃんのお陰であり、いつも優しく見守って、僕を応援してくれていた天ノ川さんのお陰である。


 ルームメイトの3人には感謝してもしきれないし、まだまだ、その恩を返せていないのに、アマアマ部屋が今日で解散だなんて、本当に残念だ。


「ミッチー、ボクも入るけど、いいよね?」

「うわっ! ネネコさん、急にどうしたの?」


 1人で感傷に浸っていると、突然、僕のかわいいカノジョが浴室に入って来た。


 初めて会った時は小学生の男の子みたいな感じだったのに、わずか1年で、誰もが認めるほどの美しいお嬢様に成長したと思う。僕の目に狂いはなかったようだ。


「お姉さまとロリが、最後の日くらいは、カレシと一緒に入れって言うから」

「それで、来てくれたんだ。ありがとう」


 うちの学園では「男性を立てるのが、女性の役割」という教育方針らしいが、こんなに気が利く3人なのだから、3人とも将来は良いお嫁さんになれるだろう。


「ボク、すぐに体洗っちゃうからさ、先に出ないでね」

「もちろん、待ってるよ――というか、僕が背中を洗ってあげるよ」


 僕はすぐに浴槽から出て、ネネコさんの背後に座る。

 こんな事が出来るのも、もしかしたら今日で最後かもしれない。


「今、見えちゃったんだけどさ、お風呂でそれってヤバくね?」

「あー、これは、思い出に浸ってただけだから、気にしないで」


 ――と言ったところで、ネネコさんはやっぱり気になっているようだ。

 僕が、ネネコさんの弱点である、背中を洗い始めたからかもしれない。


 背中や首やわきなどを洗ってあげていると、ネネコさんのほうもスイッチが入ってしまったようで、椅子いすに座ったままくるりと振り返って、僕に抱きついてきた。


「ミッチー……今日で最後だからさ、ここで、しちゃおっか?」

「したいのは僕も同じだけど、コンドームなしは危険でしょ?」


「そっか。じゃあ、クリスマスの時みたいに、ベッドでしようよ。お姉さまとロリが眠っている間に、ボクがこっそりミッチーのベッドに忍び込むからさ」


「了解。今晩はコンドームを用意して、眠らないで待ってるよ」


 2人に気付かれないように「仲良し」するのは難しいと思うが、気付かれたとしても、今日で最後なら見逃してもらえそうな気がする。






「ポロリちゃん、お先に……あれ? ベッドの布団はどこへ行ったの?」


 ネネコさんと密約を交わし、2人で風呂から上がると、なんと僕のベッドから布団がマットレスごと消えて無くなっていた。


 よく見ると、僕のベッドだけではなく、どのベッドも全て同じ状態だ。


「えへへ、今日はね、4人で一緒に、あっちで寝るの」


 ポロリちゃんが指差した場所はリビングだった。


 今日まで使っていたコタツは片付けられていて、代わりに4枚の布団がぴったりとくっついた状態で横並びに敷かれていた。


「甘井さん、明日は引っ越しですから、今日は、こちらでお休み下さい」

「もしかして、枕元にティッシュの箱とゴミ箱があるのが、僕の布団ですか?」


「ミッチーの布団が、こっちから2枚目だから、机と同じ並び順じゃね?」

「うんっ。こっちの端がポロリのお布団で、隣がお兄ちゃんのお布団なの」


「そうですね。その隣がネネコさんの布団で、向こうの端が私の布団です」

「了解しました」


 なんてこった。これではネネコさんとの密約は無効である。


 いくらなんでも、天ノ川さんとポロリちゃんに挟まれた状態で「仲良し」するなんて事は実行不可能だ。


 それどころか、僕の欲棒を1人で鎮める事すら不可能だし、こんな環境で健康な男子が眠れるわけがない。


 ――そう思ったところで、天ノ川さんは、とんでもない提案をしてくれた。


「甘井さん、私達は、2人でのんびりとお風呂に入っていますから、私のかわいい妹に、この部屋での最後の思い出を作ってあげて下さい。終わったら、2人で先に休んで下さっていても結構ですよ」


「えへへ、ポロリはミユキ先輩と一緒にお風呂なの。2人とも、頑張ってね」

「マジ? ミッチーとボクを2人きりにしてくれるの?」

「せっかくだから、お言葉に甘えようか。――2人とも、ありがとう」


 最近は、体育館裏や体育倉庫、視聴覚室など、部屋の外で「仲良し」する事が多かったので、この部屋でするのは久しぶりだ。


 僕は、天ノ川さんとポロリちゃんが脱衣所に入った事を確認してから、コンドームを用意し、ネネコさんと一緒に布団に入った。




 ここからは「エロ注意」の話です。


 性描写ベッドシーンが苦手な方と15歳未満の方は、第262話にお進み下さい。

 スマホでご覧の方は、念のため壁を背にしてからご覧ください。


 なお、登場人物には全く罪はありません。汚れているのは筆者のみです。




 ――では、準備が出来た方はどうぞ。



「ネネコさん、僕達は本当に今日で最後なの?」

「今さら何言ってんの? 『付き合うのは今日まで』って約束だったじゃん!」


 これはネネコさんの言う通りだ。僕は今さら何を言っているのだろう。

 別れがつらくならないように、2人で相談して期限を決めたはずだったのに。


「ネネコさんは、本当にそれでいいの?」


「ミッチーが、ボクとケッコンをゼンテーとしたお付き合いをしてくれるって言うなら、ずっとカノジョでいてあげてもいいけど、そうじゃないんでしょ?」


「そうだね。僕にはネネコさんを養っていける自信は無いし、僕がネネコさんに養ってもらう訳にもいかないからね」


 恋人同士なら、お互いに「体目当て」でも良いと思うが、結婚と恋愛は別だ。

 結婚相手は「お金目当て」で選ぶべきであって「体目当て」だと生活できない。


「ミッチーってさ、本当にボクの事、好きなの?」

「もちろん、好きだよ。ネネコさんには、幸せになってもらいたいと思ってる」


 ネネコさんの事は大好きだし、ずっと今の関係を続けたいとも思う。


 しかし、それだけで僕達が将来幸せになれる訳はないだろうし、世の中、きっとそんなに甘くないはずだ。


「本当は、もっとボクとエッチしたいだけなんじゃね?」

「『だけ』って事はないと思うけど、それは、もちろんあるよ」


「じゃあ、別れた後も、したくなったら、ボクとエッチすればいいじゃん」

「え? それだと、別れた事にならないでしょ?」


「べつに、元カレと元カノがエッチしちゃいけないなんて法律なくね?」

「それって、もしかして、カノジョを辞めてセフレになりたいって事?」


「そうじゃないけどさ、この寮にはオトコがミッチーしかいないんだから、しょうがないじゃん。ボクだってエッチしたくなる時くらいあるし……」


「それなら、別れないほうがいいような気もするけど……」


「それじゃダメなんだって。前にも言ったけど、ボクがミッチーを、独り占めするわけにはいかないし、明日からお姉さまと付き合うって約束もしちゃったから」


「天ノ川さんと? それなら約束を破る訳にもいかないか」


 ネネコさんの一番好きな人が天ノ川さんである事は、ずっと前から知っていた。

 この寮における姉妹の絆は、恋人よりも強いのである。


 まあいいか。天ノ川さんになら、大好きなネネコさんを安心して任せられる。


「それにさ、あんまりヤリ過ぎると『オトナの事情』で消されちゃうんでしょ?」

「あははは、それは、たしかに困るね」

「だから、今晩は1回だけね」

「ネネコさん……」


 ここから先は、ネネコさんと僕の「仲良し」タイム。

 僕達が1回だけ、何をどこにどうしたのかは、読者様のご想像にお任せします。






「ネネコさん、今まで付き合ってくれてありがとう。明日から部屋は別々になっちゃうけど、何か困ったことがあったら、いつでも言ってね。別れた後も、僕はずっとネネコさんの事が大好きだし、ずっとネネコさんの味方だから」


 賢者タイムに入った僕は、ネネコさんとの変わらぬ友情を誓った。


 僕達の部屋が別々になってしまっても、ネネコさんが僕にとって大切な人である事に変わりはない。ネネコさんと僕は、男女の関係になる前から、仲の良い友達同士だったのだから。


「じゃあ、早速、元カレにお願いなんだけど、今、ボクにしてくれた事をロリにもしてあげてよ。ミッチーなら、あと1回くらい、余裕でできるでしょ?」


「――え?」


 今、ネネコさんにしてあげたことを……ポロリちゃんに……?


「今日はロリの誕生日じゃん。それが、ボクからロリへのプレゼントだからさ」

「いやいやいや、それは、どう考えてもおかしいでしょ?」


「なんで? チューキチの誕生日には、2日間もカノジョになってあげたのに、ロリの誕生日に1回だけエッチしてあげるのは、なんでダメなの?」


「2人でデートするくらいならともかく、エッチしちゃうのは立場上マズイから」


「でも、ミッチーとロリは実の兄妹ってわけじゃないし、ミッチーは、ボクと同じくらいロリの事も好きなんじゃね?」


「まあ、それは、そうなんだけどね」


「12歳だとキョーセーセーコーになっちゃうけど、13歳だったらゴーホーなんでしょ? 合法ロリなら、ちゃんと避妊すれば、問題なくね?」


「それも、そうかもしれないけど……」


「ボクと初めてエッチしたときに約束してくれたよね? ロリとボクが気まずくならないように、ちゃんとフォローしてくれるって」


「僕がポロリちゃんとエッチしちゃったら、フォローどころか、逆に修羅場になると思うんだけど……」


「そんな事、ゼッタイにないって。ボクはロリにミッチーを取られたなんて思わないし、ここでロリを見捨てたら、ミッチーとボクが悪者になるだけじゃん!」


「そうは言ってもね、僕にも心の準備ってものが……」

「そんなの必要なくね? 振り向くだけで良くね?」


 ネネコさんは、僕の背後を指差す。


「それって、どういう事? ――うわっ!」


 僕が振り返ると、隣の布団の上には、下着姿の小さくてかわいい女の子。

 三つ編みをほどいた僕のかわいい妹が、正座をしてこちらを見ていた。


「えへへ、やっと、お兄ちゃんに気付いてもらえたの」


 小さくてかわいい妹の下着は、僕が誕生日プレゼントとして贈った下着だった。

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