第256話 ささやかな胸が成長したらしい。

 服の上からブラのホックを外す「生娘寮伝統の遊び」を観賞した後は、アマアマ部屋のルールに従い、僕から順に入浴の時間だ。


 僕は髪と体をよく洗ってから浴槽に入り、肩までお湯につかりながら、数分前に脳内レコーダーに保存したばかりの「かわいい猫の動画」を脳内再生する。


 ホックの外し方を教わったネネコさんは、ジャイコさんのブラのホックを服の上から外す事に成功し、鋭い犬歯(猫歯?)を見せるようにニヤリと笑う。


 そして、ジャイコさんが背中に手を回してホックを止め直している隙に、ネネコさんは正面に回って両手でおっぱいをみ、ジャイコさんを降伏させた。


 これは遊びと言うよりも、ネネコさんによる一方的な「おっぱい蹂躙じゅうりん」だ。


 必殺技の「電気アンマ」を封じられていても、キャットファイトにおいては最強であることを証明したネネコさん。


 僕のかわいいカノジョは、ただかわいいだけでなく、エロくて強いのである。

 ネネコさん、いつも僕を楽しませてくれてありがとう。


 ジャイコさん、ごめんなさい。おっぱいを持たない僕に代わって、ネネコさんの遊び相手になってくれて、本当にありがとう。




「お兄ちゃん、入ってもいい?」


 脳内動画を楽しく観賞しながらお湯にかっていると、浴室の戸が少し開いて、かわいい妹から声を掛けられた。


 これは「後がつかえているので早く出て欲しい」という事なのだろうか。


「ごめんね。すぐに出るから、ちょっと待ってて」

「ううん。そうじゃなくてね、今日は、ポロリも一緒に入る事になったの」


 僕が慌てて風呂からあがろうとすると、かわいい妹は小さな手のひらを2つこちらに向けてプルプルと震わせる。


 かわいい妹は全裸なので、控えめなおっぱいも一緒にプルプルしている。


「えっ? 僕は構わないけど、どうしてそうなったの?」 


「あのね、お兄ちゃんがお風呂から出たら『みんなで一緒にお風呂に入ろう』って事になったんだけど、それだとお兄ちゃんが『仲間外れ』になっちゃうから、ポロリは、お兄ちゃんと一緒に入る事にしたの」


 なるほど、そういう事か。


 天ノ川さんかジャイコさんが、僕と2人きりで風呂に入るなんて事はありえないし、ネネコさんと僕が2人きりだと、別の意味で問題が発生するかもしれない。


 ポロリちゃんは幼い頃に、当時高校生だったコウクチ先生と一緒に風呂に入っていた為、僕と2人きりでも、あまり抵抗がないらしい。 (第29話参照)


「それで、ポロリちゃんが来てくれたんだ? ありがとう」


 僕は、僕以外の4人が一緒に風呂に入っても「仲間外れにされた」とは思わないのだが、それを口実に、かわいい妹と一緒に風呂に入れるのは嬉しい事だ。


「ポロリは、今から髪を洗うから、お兄ちゃんは、まだ出ちゃだめなの」

「了解。――というか、僕が髪を洗ってあげるよ」


 去年の秋、僕が両手を骨折していた間は、ポロリちゃんに髪を洗ってもらっていたのだから、ここは、お返しに洗ってあげるべきだろう。


「えへへ、お願いします」


 小さくてかわいい僕の妹は、甘え上手で、とても素直な子だ。




「――はい。ポロリちゃん、どこか、かゆいところはありませんか?」


 これは、以前2年生の杉田すぎた流行はやりさんが僕にした質問で、僕は「特に無いです」と答えてハヤリさんを失望させてしまったのだが、ポロリちゃんは、どう答えてくれるのだろうか。 (第231話参照)


「うんとね、ちょっとだけ、お背中がかゆいかも」

「あははは、背中がかゆいなんて、ネネコさんみたいだね。――この辺り?」

「きゃははっ。うん、その辺りなの」 

「あっ! これは、もしかして……」


 ポロリちゃんの背中はスベスベなのに、ここだけ明らかに手触りがおかしい。

 これは、あの時のリボンさんの肩やわきと同じ手触りだ。 (第183話参照)


「……ポロリちゃん、ごめんね。今まで気付いてあげられなくて」


 僕は日ごろから、かわいい妹をもっとよく観察しておくべきだった。

 僕が兄ではなく姉だったら、もっと早く気付いてあげられたはずだ。


「お兄ちゃん、ポロリの体、どこか変だった?」

「うん、だいぶ成長したみたいだね。結構大きくなったんじゃないかな?」


 僕は、小さくてかわいい妹の体を上からのぞき込んで、1人で納得する。

 ポロリちゃんは、もうすぐ13歳。3月31日が、お誕生日だ。


「お兄ちゃんのエッチ!」


「――という訳で、ポロリちゃんの背中がかゆいのは、多分、ブラのサイズが合っていないからじゃないかと思うんだけど」


「かゆいのは背中と腋だけだから、そうなのかも」

「お風呂から出たらサイズを測ってあげるよ。浴衣ゆかたを作ってあげた時みたいにね」

「えへへ、お願いします」


 髪を洗ってあげた後、背中も洗ってあげてから、2人で浴槽に入る。

 小さくてかわいい妹との混浴は、身も心もいやされる貴重な時間だった。




「ネコちゃん、お先にぃ!」

「2人とも、ちょっと遅くね?」

「待たせちゃってごめんね。天ノ川さんとジャイコさんも、お待たせしました」

「ふふふ……では、3姉妹で一緒に入りましょうか」

「はい、お姉さま」


 僕達兄妹は脱衣所から出て、天ノ川3姉妹に脱衣所を譲る。

 3人が浴室に入った事を確認してから、コタツの横で採寸開始だ。


 僕は採寸用のメジャーを用意し、ポロリちゃんの目の前でひざ立ちになる。

 ポロリちゃんはパジャマを着ているが、パジャマの下はノーブラである。


「じゃあ、まずは、トップバストからね」

「えへへ、ちょっとだけ恥ずかしいかも」


 僕がメジャーを構えると、ポロリちゃんは両手でパジャマをたくし上げ、僕にささやかな胸を見せてくれる。なんだか、いけない遊びをしているみたいだ。


「はい……73.6センチ。すごいね。去年の夏は66.9センチだったよね?」


 去年の夏に測った時と比べると6.7センチも増えていた。 (第100話参照)


「そんな数字、もう覚えてないよぉ!」

「あははは、続いてアンダーバストです。えーと……63.1センチ」


 こちらは、前回の60.0センチから、3.1センチ増。

 胸が大きくなったというよりは、全体的にふっくらと成長している感じだ。


「次は、ウエストです。……52.2センチ」


 こちらは、前回の49.8センチから2.4センチ増。


「最後にヒップです」


 僕がメジャーを構えると、ポロリちゃんは、僕が測りやすいように、パジャマのズボンを途中まで脱いでくれた。


「はい……75.7センチ!」


 こちらは、前回の71.3センチから4.4センチ増である。


「うん、やっぱり半年で、だいぶ成長したみたいだね」

「えへへ。これだとブラのサイズは【A65】なの」

「【AA60】から【A65】にレベルアップか。おめでとう!」 

「でも、お腹やお尻も増えていたから、太っちゃったのかも」

「いやいや、これは、いい感じに成長しているだけで、全然、問題ないでしょ」


 実は測る必要がないウエストとヒップまで、つい勢いで測ってしまった僕の性癖の方が問題なのだが、ポロリちゃんは全く気付いていないようだ。


「それでね、新しいブラを校舎の売店で買おうと思うの。【A65】のサイズで、ポロリに似合いそうな、かわいいブラは売っているのかなぁ?」


「ポロリちゃんなら、どんな下着でも似合うと思うけど、売店に置いてあるブラの種類は少ないから、もし希望の商品が店になければ、発注しておいてあげるよ」


「商品カタログは、あるの?」


 ブラジャーの商品カタログ? それはどうだろう。

 明日にでも、カンナ副店長に聞いてみよう。


「明日、店に行ったら探してみるよ。あったら持って来てあげるね」

「うんっ! カタログにかわいいのがあったら、それを注文するね」

「あははは、毎度ありがとうございます」


 ポロリちゃんが新しいブラを欲しがっているのなら、僕から誕生日プレゼントとして贈るのもいいかもしれない。その辺りは、後ほど本人と相談だ。


 ――トン、トン、トン。


 採寸を終え、ポロリちゃんがパジャマの上に、いつものリスの着ぐるみを着ている間に、部屋のドアがノックされた。


「こんな時間に誰だろう? ちょっと見て来るね」


 僕は、すぐに部屋の入口へ向かい、来客に応対する。


「あっ……甘井先輩、こんばんは。夜分に恐れ入ります」


 ドアを開けると、大きな段ボール箱を持った柔肌やわはださんが、パジャマ姿で立っていて、少し恥ずかしそうな顔で僕に挨拶あいさつをしてから、ペコリと頭を下げた。


「柔肌さん、いらっしゃい。こんな時間に、どうされたのですか?」

「あの……私は明日、家に帰るので、ご挨拶に来ました。今……よろしいですか?」


 パジャマ姿の柔肌さんは、かわいくてスタイルも良く、見ていて飽きる事もないのだが、会話が得意なタイプではないので、2人きりだと少し気まずい感じだ。


「いいですよ。ジャイコさん達は、お風呂ですけど、もうすぐあがる頃だと思いますから、どうぞ、部屋に入って下さい」


「ありがとうございます……でも、私は、甘井先輩に……この箱を渡しに来ただけですから……」


「この箱を僕に――ですか?」

「お姉さまからのプレゼントで……私にはサイズが合わないので……」 


 どうやら、この箱の中身は、口車くちぐるま先輩のお下がりの服らしい。


「ちょっと開けてみてもいいですか?」

「どうぞ……」


 なるほど。寮生で口車先輩に最も体型が近いのは僕なのかもしれないが、この服は全て女性用だ。これを僕にくれるという事は「女装に使え」という事か。


「僕に女装の趣味はないのですけど……」

「ですよね……」


 せっかく柔肌さんが持って来てくれたと言うのに、申し訳ない。


「一応、僕が預かっておいて、もし着れそうな人がいたら、その人に差しあげてしまっても構いませんか?」


「はい。それで、お願いします」

「では、お預かりします」


 柔肌さんも、僕に女性用の服を渡すのが心苦しかったようで、僕が箱を受け取ると、ほっとしたような表情だった。


「――ミッチー、廊下で何やってんの?」


 柔肌さんから箱を受け取った直後、背後からネネコさんに声を掛けられた。


「あっ……蟻塚ありづかさん、ごきげんよう」

「ヤワハダ先輩じゃん! ミッチーは、廊下でしゃべってる場合じゃなくね?」


「ふふふ……柔肌さん、いらっしゃい。ジャイコさんから、話は聞きましたよ」

「……天ノ川先輩?」


 ネネコさんに続いて天ノ川さんまで登場し、柔肌さんは困惑気味だ。


「サラちゃん、待ってたよ。今日で最後なら、アマアマ部屋に泊まっていきなよ。私が部屋を代わってあげるから」


「えっ、ジャイコちゃん、そんな……」

「えへへ、サラ先輩なら、お兄ちゃんも、きっと喜ぶと思うの」

「ポロリちゃん、これは、いったいどうなってるの?」


「あのね、101号室には、イコ先輩が泊まりに来る事になったけど、サラ先輩も本当は、お兄ちゃんと同じ部屋に泊まりたかったんだって」


「えっ! 柔肌さん、それは、本当ですか?」


 僕が柔肌さんに確認を取ると、柔肌さんは顔を真っ赤にしてうなずいてくれた。

 もしかしたら、柔肌さんにとっては「羞恥しゅうちプレイ」だったのかもしれない。

 柔肌さん、ごめんなさい。


「ジャイコさんは、それでいいのですか?」


「モエ先輩には、話を通してありますから。それに、109号室には寮で1番人気のマー君が泊まっているそうなので、私も1度泊まってみたかったんですよ」


 モエ先輩とは、美術部の4年生、109号室の脇谷わきたにもえさんの事だ。


 マー君とは、新妻にいづま先生のご長男、新妻まさる君(1歳9ヵ月)の事で、109号室の横島よこしまさんが新妻先生に代わって教育係を務めている。


 生娘寮に男子は僕を含めて2名しかいないのに、どうやら僕は2番人気らしい。




 ――こうして、僕の女神様であった柔肌さんが、ついに僕の隣のベッドで一夜を過ごす事になったのだが、僕のベッドの横の壁に飾ってある絵(第158話参照)に気付いた柔肌さんは、顔を真っ赤にして、布団の中に隠れてしまった。


 女神様の、お美しいご尊顔を拝する事ができなくなり、非常に残念である。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る