第233話 お互いに譲り合っているらしい。(21/3/20改稿)

 今日は2月23日の水曜日。天皇陛下のお誕生日なので、授業は休みである。

 期末試験の前日であっても、朝の食堂は普段以上にのんびりとした雰囲気だ。


「ミチノリ先輩、今日は水曜日だけど、どうするの?」


 先週は本調子でなかったネネコさんが、少し甘えたような声で僕に質問する。


 毎週水曜日の午後は、ネネコさんとの「お楽しみの日」ではあるが、それは、部屋で2人きりになれる事が前提条件なので、ネネコさんと、今日「仲良し」できるかどうかは、天ノ川さんとポロリちゃんの動向次第だ。


「午前中は、ポロリちゃんと一緒に試験勉強だよ。明日から期末試験だからね」

「えー! 休みの日なのに試験勉強なの? それじゃ、つまんなくね?」


「ずっと試験勉強だと集中力が持たないと思うから、試験勉強は午前中だけで終わらせて、午後はネネコさんと2人で、ゆっくりしたいところだね」


 ネネコさんと2人きりの時間は、とても大事だ。

 しかし、ポロリちゃんや大石おおいしさんとの約束も果たさなければならない。


 試験勉強がつまらないのは、成果が分かりづらいからだと思う。


 かわいいお嬢様方に期待された状況で、その期待に応える事ができるのならば、それは、とても気持ちがいいものである。


 この「下心」こそが、オトコである僕の持つ最強の武器なのかもしれない。


「ネネコさん、あなたも前回は学年トップの成績だったのですから、甘井さんを見習って、しっかりと勉強すべきですよ。午前中は、私も付き合いますから」


 天ノ川さんも、午前中は試験勉強の予定らしい。

 お姉さまからの誘いなら、ネネコさんも断れないだろう。


「えへへ、お勉強は午前中だけだから、ネコちゃんも一緒に頑張ろ!」

「それって、午後になったら、ミチノリ先輩をボクに返してくれるって事?」


「ううん。お兄ちゃんは、ずっと『ポロリのお兄ちゃん』だから、ネコちゃんには、返せないけど、今日もちょっとだけ貸してあげるの」


「でも、今は『ボクのカレシ』じゃん。午前中だけ、ロリに貸してあげるけどさ」


 どうやら僕は2人の所有物らしい。ポロリちゃんは「妹」だし、ネネコさんは「カノジョ」なので、それは、お互い様か。


 妹とカノジョで僕を取り合っているように見えて、実は、お互いに譲り合っているところが、少し不思議である。


「ふふふ……、私もお昼過ぎに3階へ遊びに行きますから、その後は、いつも通りに2人で、ごゆっくりどうぞ。それまでは、4人で試験勉強ですよ!」


「はい! お姉さま」


 つまり、午後からは、ネネコさんと僕を2人きりにしてくれるという事か。

 天ノ川さんもポロリちゃんも、いつも空気を読んでくれて、とても助かる。






 朝食の後、4人とも制服に着替えてから、試験勉強を開始する。これは天ノ川さんの提案だが、制服を着ることによって勉強の意欲が増すらしい。


 気合を入れて勉強しようと思ったところで、僕の両隣に着ぐるみのリスとネコが座っていたら、緊張感が無くなってしまうだろう。


 この地味なセーラー服なら、夏服とは違って、ポロリちゃんの袖口そでぐちからわきが見えたり、ネネコさんの襟元からアポ●チョコが見えたりしてしまう心配もない。


「お兄ちゃん、ここは、これで合ってる?」

「……うん、これで合ってるよ」


「こっちはどぉ?」

「……うん、これも正解だね」


 ポロリちゃんは、ゆっくりと丁寧に問題を解いていくタイプなので、正答率は高く、内容もしっかりと理解している。


 後は、本人のやる気次第だが――


「ポロリもネコちゃんみたく、いい点を取るには、どうしたらいいかなぁ?」

「ポロリちゃんも、上を目指したくなってきたんだ? それは、いい事だね」


 ――無欲だった僕の妹にも、ようやく意欲が湧いてきたようだ。


「お兄ちゃんが、学年トップの成績なのに、ポロリが悪い成績で、お兄ちゃんが恥ずかしい思いをしたらイヤだもん!」


 下高したたか先輩の妹であるカンナさんも、似たような事を言っていた気がする。


 僕が学年トップの成績をとった事によって、かわいい妹に精神的な負担を掛けてしまったのなら、申し訳ない。


「そんな事は全然ないけど、ポロリちゃん向けの作戦なら、考えてあるよ」

「お兄ちゃん、ポロリの為に作戦を考えてくれたの?」


「そんなに難しい事じゃないよ。ポロリちゃんは、試験の問題を解く時、1問目から順番に解いていって、最後、時間が足りなくなっちゃうんでしょ?」


「うん。ポロリは考えるのに時間が掛かるから、いつも時間が足りなくなるの」


「それなら、簡単な問題や得意な問題を先に解いて、難しい問題や時間が掛かりそうな問題は後回しにすれば、それだけで試験の点数は、ずっと良くなると思うよ」


「えへへ、お料理とは反対なの」


「そうだね。お料理だと、時間が掛かるものから先に作り始めないと同時に完成しないけど、試験の場合は逆だね。


 試験の問題は自分で全部解けるとは限らないし、解く順番も決められている訳じゃないから、全ての問題に目を通すことのほうが重要だよ。簡単に解ける問題を後回しにして、時間が足りなくなっちゃうのは、もったいないでしょ?」


「うんっ! 今度から、その作戦で頑張ってみるね!」


 僕のかわいい妹は、僕に嬉しそうな笑顔を見せてくれる。

 ご褒美に頭をでてあげると、気持ちよさそうに目を閉じた。


 本当に素直でかわいい妹だ。






「では、私達は303号室へ遊びに行きますから、2人でごゆっくり」

「お気遣い、ありがとうございます」


 昼食をとった後、天ノ川さんとポロリちゃんを、ネネコさんと一緒に見送る。


「えへへ、ポロリは『生まれる前のイトコ』に、ごあいさつするの」

「そっか、ジャイアン先輩って、ロリの『おばさん』だったのか」

「それは、言っちゃダメだよぉ!」


「ふふふ……、ジャイアン先輩は、コウクチ先生のお嫁さんですから、間違ってはいませんね」


 303号室は、科学部の部長であるジャイアン先輩の部屋であり、ポロリちゃんのイトコは、ジャイアン先輩のおなかの中である。 (第99話参照)


「お兄ちゃん、ネコちゃん、いってきます」

「いってらっしゃい」




 ここからは、ネネコさんと2人きりの「お楽しみタイム」だ。

 僕はネネコさんとゆっくり話がしたかったので、コタツに誘う事にした。


「あれ? 今日はミチノリ先輩のベッドじゃないの?」

「ベッドだと、僕達の行為が102号室に筒抜けだからね」


「そのくらい、別に聞かれても良くね?」

「あははは、ネネコさんなら、そう言うと思ったけど、僕は少し恥ずかしいかな」


 僕達の会話や行為が盗み聞きされるだけなら、まだいいのだが、その感想までこちらに聞こえてしまうのは、非常に恥ずかしい。 (第229話参照)


「しょうがないなー。それじゃ、ここでガマンしておくよ」




 ここからは「エロ注意」の話です。


 性描写が苦手な方と15歳未満の方は、第234話にお進み下さい。

 スマホでご覧の方は、念のため壁を背にしてからご覧ください。


 なお、登場人物には全く罪はありません。汚れているのは筆者のみです。


 運営様からの指導により一部表現を改めましたが、それでもまだ問題がある場合は「233話に問題あり」とご連絡下さい。



 ――では、準備が出来た方はどうぞ。




「え? ネネコさんの席は、僕の右側でしょ?」

「別にいいじゃん。今は、お姉さまもロリもいないし」


 ネネコさんは、僕とコタツの間に入り込み、僕の体を背もたれにしている。

 これは、おそらくポロリちゃんのマネである。 (第174話参照)


「でも、ここに座ると、制服のスカートがしわになっちゃうよ」

「ボクのスカートは平気だけど、ミチノリ先輩のズボンの方がヤバくね?」


「これは仕方ないでしょ。オトコの生理現象なんだから」

「ロリは、よく、ここに座ってるけど、その時もこうなってるの?」


「それを僕に言わせないでよ。ポロリちゃんにも聞かないでね」

「やっぱ、そうなのか。ミチノリ先輩がロリコンっていううわさは本当だったんだ」


「何を今更。僕と付き合う前に『たった3歳差じゃん』って言ってくれたのは、ネネコさんの方だったと思うんだけど……」 (第153話参照)


「ロリは、まだ12歳だから、4歳差じゃね?」


 ネネコさんはニヤニヤしながら振り返って、僕の顔を見る。


「いや、ポロリちゃんの学年は、ネネコさんと同じだから」


 僕はネネコさんの体を、後ろから抱きしめる。

 ネコの着ぐるみパジャマもいいけど、この地味なセーラー服もいいものだ。


「うちの学園の生徒って、5年生になったら就活開始なんでしょ? ミチノリ先輩は、どうするつもりなの?」


「多分、主夫を欲しがっている女性を紹介してもらって、お見合いさせてもらう事になると思うんだけど、まだ全然、実感が持てないんだよね」


「ボクも自分が誰かとケッコンするなんて、まだ考えたこともないよ」


「ネネコさんは、客観的に見ても、すごくかわいいから、きっと、いい人を紹介してもらえるよ。年収1千万円どころか、1億円も夢じゃないと思うよ」


「ボクは卒業まで、まだ5年あるけど、ミチノリ先輩は2年しか無いじゃん。お見合い以外じゃダメなの?」


「全然ダメじゃないけど、僕なんかを婿にしたいと思う女性なんて、そんな簡単には見つからないと思うよ」


 長内おさない先生には、振られてしまったし、ミハルお姉さまも、ずっと今の仕事を続けるつもりはなさそうである。


 寮の外に知り合いもいないので、僕が自力で結婚相手を探すのは不可能だ。


「それなら、シュフを目指すのは辞めて、進学したほうが良くね? ミチノリ先輩は学年でトップの成績じゃん!」


「学年でトップって言っても、18人しかいないし、この学園の偏差値が低いだけでしょ? ネネコさんも学年トップだけど、小学校の時の成績はどうだった?」


「そっか、それならシュフのほうがいいのか」

「専業主夫が無理だったら、兼業主夫でもいいんだけどね」


「だったら、もうロリとケッコンしちゃえば良くね? ロリは、もともとシュフ志望じゃなくて、シェフ志望じゃん」


 ポロリちゃんと僕が結婚? なるほど、その手があったか。

 だが、そんな事を考えてしまったら「兄失格」どころか「人間失格」だ。


「いや、それは絶対に許されないでしょ。3年間浪人してから、一生、妹に養ってもらうなんて、僕はそこまで酷い人間じゃないよ」


「ボクとケッコンするつもりがないなら、誰とケッコンしても一緒じゃね?」

「僕は、ネネコさんが一生養ってくれるなら、喜んで結婚するけど」

「ボクだって、ミチノリ先輩が年収1千万あれば、ケッコンしてあげてもいいよ」


「ネネコさん、この話は、むなしいから、もう終わりにしない?」

「そうだよね。そんな事より、早く始めようよ」


「えっと……ここで『仲良し』しちゃってもいいのかな?」

「うん。制服を着たまま、パンツだけ脱ぐのって、なんかエロくね?」


「あははは、そうだね。先週のお返しで、今日は2週間分、頑張るよ」

「マジ? じゃあ、最初はボクが上ね」




 この後、僕達は制限時間一杯まで「仲良し」を続けた。

 お陰様で、明日の期末試験は「賢者モード」で挑めそうだ。

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