第129話 夫婦の営みはとても重要らしい。(21/2/14改稿)

 ご愛読ありがとうございます。今回は「エロ注意」の話です。

 下ネタが苦手な方と15歳未満の方は、第130話にお進み下さい。


 運営様からの指導で表現を改めましたが、不十分な場合は再修正致します。

 まだ問題があるようでしたら「129話に問題あり」と速やかにご連絡下さい。


 スマホでご覧の方は、念のため壁を背にしてからご覧下さい。




 ――では、準備が出来た方はどうぞ。




「夫婦の夜の営みは、子供を作る為にも夫婦のきずなを深めるためにも、とても重要です。今日の性交演習では、新婚初夜に備えて心構えと作法を学びます」


 長内おさない先生は、僕の隣で、準備していたノートを読み上げている。


 ノートは長内先生の直筆のようで、丸くて可愛らしい文字で記され、ところどころ「ここ重要」などとカラーペンで追記されており、なんだか楽しそうである。


「私達女性が子を授かる為には、パートナーの男性から遺伝情報を受け取る必要があります。男性側の遺伝情報は、精巣せいそうで作られる精子に組み込まれていて、この精子を受け取る行為――具体的には、パートナーの男性に精液を直接体内に注入してもらう行為――これが性交、つまりセックスです」


 ベッドの横に立ち、真っ赤な顔で、ぎこちなく説明分を読み上げる長内先生。

 発情した種馬の格好で正座し、黙って真剣に話を聞くアシュリー先輩。

 セーラー服姿で横座りし、ニヤニヤしている警備員のお姉さん。


 学園の教室の中とは思えない不思議な光景だ。


「甘井さん、ここまでで、何かおかしなところあった?」

「説明は特に問題ないと思いますけど、新婚初夜なのにセーラー服なんですか?」


「全員パジャマに着替えてもらってもいいんだけど、本番の授業はお昼前だから、制服のまま受けてもらった方がいいかな、と思って」


「それもそうですね」


 性交演習は5年生の授業だ。僕が来年この授業を受けるとして、まわりのクラスメイトが全員パジャマだったら刺激が強すぎて精神崩壊してしまうかもしれない。


「他に質問はない?」


「精巣って、何でしたっけ?」とか言ったら、どう解説してくれるのか個人的には興味があるが、長内先生をいじめるつもりはないのでやめておこう。


「はい、特にありません。とても分かりやすいと思います」


「それじゃ、続けるね。


 男女が性的に興奮すると、男性は陰茎いんけい勃起ぼっきし、挿入が可能な状態になり、女性はちつが愛液で潤う事によって、受け入れが可能な状態になります。


 お互いの準備が整ったら、男性が女性の膣に陰茎を挿入し、性交開始です。


 男性は挿入した陰茎の亀頭きとうと呼ばれる部位を、腰を振ることによって何度も何度も女性の膣にこすりつけます。擦りつける事によって快楽を得て、より性的興奮が高まり、絶頂を迎えると陰茎の先端から精液を射出します。これが射精です」


 中学のときに受けた保健の授業と比べ、より具体的な内容である。どういうわけか聞いているだけで、僕も「挿入が可能な状態」になってしまった。


「射精に至るまでの所要時間は人によってまちまちですが、擦る回数は、おおむね千回くらいだと言われています。――甘井さん、これは合ってる?」


「僕は童貞なので分かりませんけど、そんなに擦らなくてもよさそうな気がします。多分、もっと少ないと思います」


 自分で処理している限りでは、千回も擦る必要はなかった気がする。


「アタシの経験だと、だいたいそのくらいかな。『ゴムあり』だけど」


 警備員さんは、男性が腰を振る回数をわざわざ数えているのだろうか。


新家しんやさん、ゴムって何ですか?」 

「コンドームの事。使い方は、この学園では教えてもらえないらしいよ」

「コンドームってゴムで出来ているのですか?」

「そうだよ。違う素材のも、結構あるみたいだけど」


 警備員さんは、長内先生の質問だけでなく、アシュリー先輩の質問にも丁寧に答えていた。




 長内先生の説明が終わり、アシュリー先輩と警備員さんの性交演習が始まる。


 アシュリー先輩は本番でも男性役。警備員のお姉さんはアドバイザーを兼ねた仮の演習相手で、本番の授業では生徒から希望者を何人か募るそうだ。


服部はっとりさんは、自分が好きな男性にして欲しいと思う事を、アタシにすればいいから。簡単でしょ?」


「それは、とても恥ずかしいですね。新家さんは、して欲しい事ありますか?」


「して欲しいっていうか、まず、この服を脱がしてもらわないと、アンタから借りているんだから、汚したら悪いでしょ?」


「その制服、脱がせてしまっていいのですか? 隣で私の後輩が見ていますよ?」

「いいよ、別に。甘井さんも見たいだろうし、一応、これも私の仕事なんだから」


 経験豊富な警備員のお姉さんは、僕に見られていても余裕の表情だった。


「それでは、失礼します」


 アシュリー先輩は、警備員さんの着ているセーラー服を上から先に脱がす。


 警備員さんが1つに束ねた後ろ髪を服の中に入れてからバンザイすると、派手な赤いブラが見えた。


 続いてスカートが外される。下は上とおそろいの真っ赤なパンツだった。


「ダビデさん、これ、預かっていて」

「分かりました」


 アシュリー先輩から、脱がせたセーラー服を渡され、僕が畳んで預かる。

 あこがれの先輩の制服だ。残念なことに、今は発情した種馬のお姿だが……。


「それでは、前戯ぜんぎから初めて、お互いの性的興奮を高めてください」


 長内先生の合図で、アシュリー先輩は下着姿の警備員さんを押し倒し、そのまま並んで横になる。しばらく見つめ合ったあと、ゆっくりと警備員さんを引き寄せ、そのままハグ。そして、ごく自然に唇を合わせ、ブラの中に直接手を入れた。


 さっきまで余裕の表情だった警備員さんが、慌てて唇を離す。

 アシュリー先輩の顔は、こちらからではよく見えない。


「はあ、はあ、はあ……むちゅっ……」


 2人とも息が荒いが、これはただの息継ぎだったようで、口づけはすぐに再開された。しかも、かなり濃厚である。どうやら舌も絡ませているようだ。


 アシュリー先輩は両手をブラの中に入れ、警備員さんの胸をみしだいている。

 警備員さんはうっとりとした表情で、なすがままだ。


 長内先生は、閉じたノートを両手で胸に抱えたまま、静かに見入っている。


 ――「中には『ガチな子』もいるみたいですよ」


 僕の脳内ボイスレコーダーからは、天ノ川さんの声が再生されていた。


「ちょっと! 服部さん、それを入れるのは勘弁して!」


 パンツを脱がされそうになったところで、警備員さんが我に返る。


「まだ挿入していないのに……」


 まさか、さっきの「お尻に差しちゃうぞー」は本気だったのではないだろうか。


 警備員さんの顔は真っ赤だが、アシュリー先輩は物足りない様子だった。


「これ、授業でやるのは危険すぎませんか?」


 これでは「性交演習」ではなく「ガチゆり実習」のような気がする。


「そうかなあ? オトコの人って、実際は、こんな感じじゃないの?」


 アシュリー先輩や長内先生の理想の男性は、こんなにワイルドなのだろうか。演習は実践に近い方がいいのかもしれないが、これではどう見てもわいせつ行為だ。


「アタシの経験だと、マグロ男もいるけど」

「マグロ男とは、どのような男性ですか?」


 アシュリー先輩が、警備員さんに質問する。

 僕も初めて聞く言葉だ。


「セックスの時に、何もしない男の人」

「その場合、どうなるのですか?」


「長内さん、正常位以外も説明していいの?」

「はい、お願いします。私も説明文は一応、自分で用意してきました」


「じゃあ、そっちが先の方が分かりやすいか。――ねえ? 甘井さん」

「そうですね。僕も、先生の説明を聞いてみたいです」

「それじゃ、体位についての補足説明ね」


 長内先生は再びノートを開き、手書きの説明文を読み上げる。


「性交時の体位は何種類もあり、2人の好みによって、様々な体位を楽しむことが出来ます。


 最も一般的なのは正常位せいじょういと呼ばれる体位で、男性が、仰向けの女性の上に覆いかぶさるような形で挿入する事により、お互いに相手の顔を見ながら行為に励む事ができます。


 女性が四つんいになり、男性が女性の背後から挿入する体位を後背こうはいと呼び、こちらは男性が挿入しやすく、腰も振りやすいという利点がありますが、お互いに相手の顔は見ることが出来ません」


「そう、相手がブサイクなときは、顔が見えない方がいいよね」


 警備員さんが長内先生の説明に同意する。身もふたもない話である。


「女性が仰向けの男性の上にまたがって挿入する体位を騎乗位きじょういと呼びます。こちらは女性が主導権を握り、自由に腰を動かすことができます」


「じゃ、服部さん、今度はアタシの番だからね」


 警備員のお姉さんはアシュリー先輩を仰向けに押し倒すと、股間の種付け装置をまたに挟むように腰を下ろす。そして、なまめかしく腰を前後に振り始めた。


「上下に腰を振ると抜けちゃうから、こうやって前後に振るのがコツだよ」


 赤いパンツで腰を振り、徐々にスピードアップする。

 腰の動きに合わせて上下するおっぱいも魅力的だ。


 騎乗位というだけあって、たしかに女性が馬に乗っているような感じではあるが、乗馬とは馬の向きが上下逆である。


 やがて警備員のお姉さんが力尽き、性交演習の予行演習は終了となった。


 僕が長内先生のお役に立てたのかどうかは分からないが、僕自身はいろいろと勉強になった気がする。そして、僕の脳内には新しい惣菜おかずが追加されたのだった。

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