6.幕間
◇
――えー、では最後にですね、将来の夢や目標はありますか。
『公式チームにはいって、騎士のジョニンを受けること、です。外国の大会にも参加して、パパのけんきゅうを手伝いたい、です』
『おなじーく』
『……むりだと思う』
――はいはい、もうちょっとですから喧嘩はあとにしてくださいね。なるほど。ときに今、お父様といいましたが――
***
ブチリ、とレコーダーの停止ボタンを押します。
とたん、深夜のアパート部屋が急にひんやりとした空気で埋まった気がしました。
「うっわぁワタシ、声若ぃなー」
ラジオ局の打ち上げでヘロヘロになり、ろれつの回らない舌でひとりごちます。
まさか酔ってひっくりかえした小物入れの底が10年モノのタイムカプセルだったとは、いやはや。
「こんなオトナに誰がしたっ、オマエらだこんちくしょー!」
などと、寝そべったままイヤフォンをもってレコーダーを振り回してみたり。
「あの制作がなまじ評価されたばっかりに、今やすっかり前線の取材記者……ワタシはもっとこう、完成した美しい台本を美しく読みこなすお仕事がしたかったのに!」
なお本当にそれだけで食べている人がいるかは不明です。この業界、居ればいるほどスキルがマルチ化していきますからね。
(でも……これも巡り合わせかもしれませんね)
帰るなりフローリングへ放り出した
「国際アーマードバトルリーグ、日本初の高校生チームが出場、かぁ。あの子たち、今はどこで何してるんですかねぇ……」
フレッシュな話題が最近、ことに胸に刺さります。悪い意味で。
己の境遇を呪うように目を細めたワタシは、やがてバサリとそれを投げだしました。
あの出会いを『運命』と呼んだ先輩なら今のワタシを見て何と言うでしょうか。
――ダンボールの章・おわり
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