第二十話 ~覚醒~
神発暦3512年 夏
ぼくの視界は今、白一色に染まっている。
≪いったい何が?≫
死んだのだろうかとも思ったが、体の感覚が残っていて死んだにしては不自然だと思った。
≪今、あなたは【神の子】として私が少しの間だけ守護しています≫
「えっ!?」
突如心に響く声に、ぼくはあたりを見渡すが、白一色の世界でそれ以外になにも見つけられない。しかし、どこかで聞いたことのあるように聞こえる。
≪お久しぶりね、今はレオン君≫
「神様?」
ぼくはこの声の主を、自分のことを転生させてくれた神様のものであることを思い出した。
≪えぇ、その通り≫
「みんなは?」
ぼくは先ほどまで後ろで倒れていたはずの、マルコ、ショーン、エミリーのことを真っ先に聞いた。
≪優しい子ね、大丈夫、まだあなたの友達は無事よ。それに、この空間での時間は外の1億分の1、もっと分かりやすく言えば、外での一秒がここでは3年以上の歳月になる。だからゆっくりおしゃべりすることもできるのよ≫
「良かった」
ぼくは友達の安否を確認して安心した。
≪でもね、安心するのはまだ早いわよ、レオン。この空間が解けたら、すぐさまあなたが、そして、友達も殺されてしまうでしょう≫
「!?そうだった」
ぼくはあまりのことに混乱していてが殺される寸前だったことを再認識した。
「ぼくはどうすれば」
≪それを教えるというか、なぜあなたがこの空間にいるのかを教えてあげる。それが【神の子】として認められた者の権利だから≫
「権利?」
≪そう。あなたも知っての通り、世界には私たちの加護が与えられる。そしてその加護の強さは人により変わってくる。なんでかわかるかな?≫
「すみません、わからないです」
≪それはね、神様があなた達に直接加護を与えているわけではないの。
私たちの住んでいる世界にも、あなた達の世界みたいに、魔道具といっていいものが存在していてね。あなた達に私たち力の一部を送ることができるの。
後は、それを受け取るあなた達の問題、10年ほど成長すると生き物の中に特殊な空間が出来上がるらしく、そこに力が入るそうよ、そして、その大きさは各人で違う、だから、それが加護の強さを決めるの。
私は正直どうやっているのかしらないから、仕組みは教えられないけどね≫
「なるほど」
≪ここからが、重要なのよ。あなた達の中で【英雄】や【神の子】と呼ばれるのは、最上位の加護を得ている人のことをいうのでしょ≫
「はい」
≪でも、残念ながら、神からしたらそれはただ、加護を受け入れる空間が大きかっただけの存在なのよ≫
「では、どうして神託でそう言わないのでしょうか?」
≪それは、今になってそんなこと言ったら、少なからず混乱が生じる可能性があるからでしょう。でも神託で何度か教えてあげたこともあったけど、秘匿しているのでしょうね≫
「そうでしたか」
≪そんなことよりも本題です。では私たちにとっての【神の子】とは何でしょう?≫
「!?魔道具ではなく、直接力を与えた人間のことですか?」
≪正解です。まぁ、気付いているでしょうから、もう言いますが、私、霊魂の神【ジーラ】の子としてレオン君、あなたが選ばれました≫
「なぜですか? やっぱり、転生させた人間だからですか?」
≪それは、まだ教えられませんが、これからあなたの潜在能力を強制的に一度だけ特別に引き上げます。だが気にくわない加護もありますが。まぁいいでしょう≫
「?」
「これは今回だけの特別ボーナスです。今後一切、危険な状況になっても私が手助けすることは禁止されているのでできないわ≫
「ありがとうございます」
ぼくは疑問に思ったがとりあえず流した。
≪その力をもってすれば、強大な敵を退けることもできるでしょう。そして、【神の子】として選ばれた人間には我々神による試練を教えられます。それを乗り越えるも良し無視するも良し、それは個人の自由です。
ただ、その試練を突破すれば神から【神の子】にあなたのいる世界の真実を教え、さらに成長するためのヒントを与えます≫
「わかりました。ぼくは試練に挑戦します」
≪ふふふっ、別に参加表明はいらないのだけれど、第一の試練としてそうね、18歳になるまでに、古のダンジョンの最下層に行きなさい。それがあなたに与える試練です≫
「わかりました。頑張ります」
≪最後に、私の加護を直接与えるのはレオン君あなたが初めてです。簡単に死んでもらっては困ります。精進なさい≫
「はい!」
≪まずは目の前の敵を叩き潰しなさい。レオン・マルク≫
霊魂の神【ジーラ】そういうと白い空間が段々と晴れてきた。
すると先ほどと打って変わって体が軽く感じ、痛みも消えた。さらにいつも手に持っている剣が妙に軽く感じ、持っていることを忘れてしまいそうになる。
そして、頭の中で何をすればいいのか、どう体を動かせばいいのかが、自然と理解できるようなっていく。
≪どうしてだろう。いまなら何でもできてしまいそうな気分になる≫
ぼくは目の前で止まっている。本当は少しずつ動いているのだろう。刀を触ると、
≪〈
そう心の中で唱えた。すると時間が動き出し、刀が砂のように崩れ落ちた。
「!?」
【ゼスト】は突然のことに驚き後ろに後退した。
「貴様、何をした!」
【ゼスト】はぼくに問い詰めたが、ぼくは剣を前に構え、思いのままに詠唱した。
「〈
そして、ぼくを中心に光の柱が上がった。
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