第十二話 ~付与魔法・雷~
神発暦3512年 夏
「いよいよ、レオン君お待ちかねの付与魔法を教えます。
付与魔法には肉体を強化するものと、武器などの物を強化する2種類分けることができることは知ってるね?」
「はい」
「では、その中で強化しやすいとされているのが肉体強化なのだが、なぜかわかるかい?」
「えっと、魔力は自分の体から外に出すことが難しいから物を強化するのが難しく、肉体強化は体内で魔法を実行するからやり易いのだと思います」
「魔力を外に出すことが難しいのは正解だが、肉体強化の説明としては外れだよレオン君。
肉体強化の付与魔法を実は体内ではなく体の周りに体を補助する命令を与えた魔法を纏わせることが基本とされている。
それは、体内で肉体強化を行うと体が耐えられず、最悪の場合死に至ることがある」
「それじゃぁ、体と物で差がない気がするのですが?」
「ところがこれが不思議でね、付与魔法は足りなくなった魔力を術の対象に魔力があればそこから補って、その効果を維持したり増幅させる性質があるんだ。
だから、魔力を持たない物より、魔力をもつ体の方が強化しやすいんだ」
「なるほど、わかりました」
「では、君が気になっている戦神の加護を授かっているか確認するにはどうするのがいいと思う?」
「やはり、維持と強化のし辛い武器に物に付与魔法をかけてみるのがいいと思います」
「普通はそう思うだろうね、しかしそうではないんだ。
私は体内で肉体強化をすると体が持たないといったよね」
「はい、えっ、まさか!」
「あぁ、その通り、肉体強化を体内で杖を使わずに実行する。
体内で付与魔法を行使することは加護を授かっていなくともできる。しかし、体が持たない。
ここまで、言えばわかるね、戦神の加護は危険な体内強化から守ってくださる。それだけじゃなく、魔力を纏わせる通常の付与よりはるかに強力な肉体強化を期待することができる
もしレオン君が加護を授かっていなくとも、私が回復魔法で治すから心配はいらないが、君の魔力性質は雷だから回復魔法を使っても、君の魔力が一時的な暴走状態になって体が麻痺するリスクのある。
それでも、やるかい?」
「はい、ぼくは先日初めて行ったときにとても大きなクロウ・ベアーを見つけました。そのとき、今のぼくじゃ勝てないと思ってしまいました。
もしぼくに、戦神の加護があって付与魔法を使いこなせていればそんなことは思わずにあのクロウ・ベアーにも立ち向かって行けたと思うんです。
ぼくは将来冒険者になりたいとおもっています。どんな困難にも立ち向かう強さが欲しい。ぼくにとって戦神の加護が備わっているかどうかは今後の人生の分かれ道なんです。
だから、少しでも早く自分の可能性が知りたいんです。お願いします。先生」
「そうか、君はというか、ショーン君も同じことを言っていた気がするね。その熱意は自らが高みへ向かうために必要だ。
しかし、常に自分を見つめなおす冷静さを失ってしまってはいけないことを忘れないでほしい」
「わかりました」
「それじゃぁ、いくよ。
まずは体の魔力を練るんだ。そして、体を強化することを願うといい。魔法は君に答えてくれる」
「はい」
ぼくはパレス先生の言うとおりに魔力を練りながら、体の強化を願いイメージした。
≪より強くそしてより速く≫
ぼくの願いに答えるように体が次第に軽くなっていくのを感じる。
すると、ぼくの体から”バチバチ”と静電気がなっていく。
「これは?」
「どうやら成功のようだね、きちんと説明していなかったが、なぜ体内で付与魔法を唱えると危険かというと、その人の魔力の性質の強化をされてしまうんだ。
だから、火の性質を持つ人の場合、加護がないと体が中から燃えてしまう。だから、レオン君が麻痺するといったのもそういうことだ。
雷の場合は、加護がなければ体の痺れと同時に焼けてしまうかもしれなかったけど、おめでとうレオン君。
君は、確かに戦神の加護を授かっている」
「本当に、本当ですか」
ぼくはうれしくなって、飛び上がった。
「やったー!」
≪えっ!?≫
ぼくは飛び上がった瞬間、目の前のパレス先生が消えて、マルク領の町が眼前に広がった。
「うそ!」
ぼくは思わず声を上げた。
おそらく、20~30メートルほどジャンプしたようで、その刹那の間、景色を楽しんでいたが、そう長くは続かたかった。
段々と、当然だが、落ち始めて行くからだ。ぼくは死を覚悟した。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
そして地面と思いっきり衝突した。が、
≪あれ、痛くない!?≫
ぼくは、体の至る所を見つめて、混乱していると、
「それが、戦神の加護を授かった者の肉体強化だよ。レオン君。
君の性質は雷だから、より速く動けるようになり、そして力も強くなる。当然耐久力も人のそれを凌駕する。だが」
パレス先生がそういった瞬間、ぼくの体から先ほどの軽快さが抜け、一気に気怠さに変った。
「まだ、制御が出来ていない状態だから過剰な質力を常に出し閉まっている。
すると魔力切れを起こしてしまいます。
これを飲みなさい」
そういうと、パレス先生がぼくにポーションを渡してくれた。そして、落ち着いた僕に言った。
「後は、力を使いこなすための練習を始めましょう」
ぼくは隠し切れない興奮を込めて、笑みを浮かべながら答えた。
「はい!」
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