第十一話 ~放出魔法・相性~
神発暦3512年 夏
久々に友人たちと会ってから数日後、ぼくは再びパレス先生の家にやってきていた。
「おはようございます」
「おはようレオン君。今日は放出魔法を教えるんだったね」
「はい、よろしくお願いします。
それと、ぼくに戦神の加護がありそうか知りたいので付与魔法についても教えてほしいです」
「わかったよ、放出魔法を教えた後、確認してみよう」
「ありがとうございます」
「放出魔法を教える前にまずは守護魔法がきちんとできるか見せてもらってもいいかな?」
「はい、いきます」
≪アイアン・シールド≫
ぼくが心で鉄の盾を作り出す守護魔法を心の中で唱えた。すると、シンプルな鉄製のような光沢のある盾が表れた。
本当に慣れてくると何も思わずに自然と盾を出せるらしいが、今のぼくにはまだ心の声で唱えることで何を出すのかイメージする必要がある。
「なかなか良い盾だね。しっかりと練習しているようだ」
「はい」
「基本の守護魔法は大丈夫なようだ。
後は鉄よりも固い素材の盾を作ったり、より多くの数の盾を生成できるようになると良いが、それは私が教えれることではないから自己鍛錬あるのみだよ」
「頑張ります」
「じゃぁ、放出魔法を教えよう。
放出魔法の基本は守護魔法のように物質を想像しそれを空間に固定した後、目標に向かって飛ばす魔法だ。
作り出す物は人それぞれ得意な物があって、魔力の質で違うと言われている。これは、放出魔法だけじゃなくて、ほかの魔法にも共通している部分ではある。
では、どうやって魔力の質を知るかわかるかい?」
「はい、魔質水晶の魔道具か魔水を使って調べます」
「よく勉強しているね、そのとおり。
じゃぁ、今から水晶の魔道具を持ってくるから待ってて」
「はい」
ちなみに、水晶と魔水では圧倒的に魔水の方が魔力の質を正確に調べることができるが、魔水は高濃度の魔力が蔓延している危険な地域やダンジョン内の水のことで、手に入れるのが非常に大変だ。
さらに、数日でただの水になってしまうため、使い勝手がとても悪いため高位の魔法使いを目指す者くらいしか使わない。
一方水晶は魔道具の一種で、あらかじめ決められた性質に当てはまる魔力を観測すると、色が変わる仕組みになっていて、高性能なものになればなるほど多くの種類の魔力を測定できる。
*
「お待たせ、それじゃぁ図ろうか、この水晶はなかなかの性能で、基本5性質の他に、雷と鉱石の性質まで図ることができる優れものさ」
基本5性質とは火、土、水、風、氷の性質のことを言う。これは、もっとも測定しやすいとされる魔力の性質で、これ以外の性質の魔力を図れる水晶は値段が格段に上がる。
≪沢山の杖を見たときに薄々思っていたけど、パレス先生はかなりのお金持ちだな≫
「レオン君、水晶に手をかざして魔力を流して」
「はい」
ぼくはそう言うと、魔質水晶に魔力を流した。すると、水晶の色が黄色に変化した。
「そうか、君は雷の性質の魔力を持っているみたいだね。これはなかなか珍しいが、さすがマルク家といったところだね」
マルク家の人間の魔力の性質は雷になることが多く、これはマルク家の祖先とされるゲビィターから続いていると言われている。
「ではさっそく放出魔法を開始しようか、まずは魔力を空間に固定する練習から始めよう。
杖に魔力を流して守護魔法で盾を作ったのと同じように、今度は杖から魔力を出すイメージであそこにある案山子に向けて放ってみるといい」
「はい、やってみます」
ぼくは言われた通り、杖に魔力を流し、杖の先を案山子に向けて魔力を出して見た。
すると、”バチッ”と杖から電気が出た。
「うわっ」
ぼくは思わずたじろいだ。
「やっぱり、君はなかなか想像する才能があるようだ。大概の子はしっかりとしたイメージを掴めずに写真や実演を見て出せるようになるものだが、レオン君はお父さんやお兄さんたちが雷の放出魔法を出すのを見たことがあったのかい?」
≪さすがに、前世のテレビで雷の映像を見たことがあるなんて言えないな。
この世界にはせいぜい写真があるくらいで映像を作り出す技術はまだ出来ていない≫
「はい、実は兄が出すのを見たことがあって」
「そうか、それにしても最近のことじゃないのに対したものだね、時間が経つにつれて想像しずらくなるものなのに」
「ありがとうございます」
「だが、やはり特殊な性質なだけあって雷の魔法は難しい。特に放出魔法で大切な空間に維持することがもっとも困難だと言われているからね。
正直こればかりは本当の天才か破壊神の加護得てないと難しい。君のお兄さんのホーク君は加護を授かっていたから雷の空間固定がすぐに出来ていたが君は恐らく、授かっていなそうだから放出魔法は諦めたほうが賢明かな」
「使えるようにならないですか?」
「日々空間に維持する訓練を行えばできるようになるだろうが、聞いたところによると君は将来は魔法使いではなく剣士職につくつもりなのだろう。
なら、正直魔法使いの基本の放出魔法は加護を貰っていないなら使うことはないだろう」
「そうですか」
ぼくは少し気落ちした。
≪剣士になると言っていてもやっぱり魔法を撃ってみたかったな。個人的に練習してみようかな≫
「気落ちするのはまだ早いよレオン君、次に試すのはお待ちかねの付与魔法だ。もし加護があれば雷の性質と相性の良い魔法の一つだから放出魔法を極めるより強くなれるかもね」
ぼくはその事を聞いて心が躍ると同時に緊張していた。
≪戦神様どうかぼくに加護を!≫
再び僕は心から願った。
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