第十話 ~友達~

 神発暦3512年 夏




 今日ぼくは、昨日マルコと約束したいつもの遊び場へと向かっている。


 昨日の記憶がまだ鮮明に残っていて、心は未だに少し興奮している。




「おーいレオ、遅いぞ」




 ぼくが集合場所に着くとすでに、みんなが集合していた。




「レオ君、大丈夫だった。昨日森に行ってたって聞いたけど」




 そうぼくに話しかけてきたのは、領内にある鍛冶屋の娘のエミリーだ。職人気質の鍛冶屋の子とは思えないほど気弱だが優しい子だ。




「大丈夫さ、レオンはそう簡単にやられるようなやつではない」




 そういったのはエミリーの双子の兄のショーンだ。妹のエミリーと違い気が強く頭が良い、よく本を読んでいて、最近ぼくと同じく魔法を習い始めている。




「そういうことじゃないよ、お兄ちゃん。森は危ないってママが言ってたもん」




「妹よ、レオンをよく見てみろ何処も怪我をしてないだろう。心配するだけ損するぞ」




「ショーの言う通り、ぼくは元気だよエミリー」




「それじゃぁ、今日は何をする?」




 マルコがそう言った。




「マルコ、俺はもう決めている」




「ん?何するんだ」




「レオンに森に行った時の話をしてもらうのだ。俺たちはレオンと違ってまだ森に入ったことがない。


 だから、狩りがどんなものなのか、将来冒険者を目指している身としては興味がある」




「確かに、それが良さそうだ」




「えー、そんなことより、いつも見たいに冒険者ごっこしてるのみたい」




「妹よ、冒険者ごっこではない。特訓だ」




 エミリーはいつも女の子にもかかわらずなぜかついてきて、ぼく達3人の将来の目標である、旅する冒険者になるための特訓をいつも見ている。




「ふん、好きにすればいいでしょ」




 エミリーはそう言って頬を膨らませてそっぽを向いたがその場に座った。どうやら、帰らず話を聞くようだ。




「それじゃぁ、ぼくが森でウル爺と狩りをした時の話をするよ」




 そう言って、森で初めて狩りをして魔獣を解体したこと、とてつもなく大きなクロウ・ベア-を見つけたこと、それと、ホーン・ラビットと戦ったことなどを、みんなに話した。




「そうか、レオンほどの腕があればホーン・ラビットは余裕なのか。


 ちなみに、クロウ・ベアーはどうだ?」




「うーん、正直難しいと思う。ぼくの剣技は速度が一番の武器だけど、懐に入れるかはわからない、かなり長い爪をもっていたから」




「ならレオ、俺がそいつを引き付けとけばいけるんじゃないか?」




「たしかに、マルコとぼくの二人がかりなら届くかもしれない」




「なら、俺は魔法で二人を援護する係になるな」




 マルコは元冒険者の父から森やダンジョンの探索技術や盾役タンクとしての立ち振る舞いを学んでいる。そのため、ぼくと同じく前衛に出て戦うことになる。


 それとショーンは魔法を学んでいて将来は魔法使いとしてぼくたちを援護するそういうチームワークで戦うための練習もやっている。




「そういえば、教会で神託をもらって来てるんだろ?どうだったんだ」




 ぼくはマルコとショーンが先日集まった時に教会で神託を聞きに行くと言っていたことを思い出した。




「あぁ、それならばっちりだったぜ、やっぱり神様は俺たちのことをちゃんと見てくれているみたいでよ。


 俺は守護の神様から加護を頂いているそうだ。しかも、中位の加護だってさ。これなら一等級冒険者も夢じゃないぜ!」




「俺はマルコよりもすごい、破壊の神と先見の神の2柱から加護を頂いた。破壊の神の加護は中位の加護を受けている。どうだすごいだろ」




「おいショー、せいぜい加護の数だけ自慢する3流冒険者どまりにならないようにな」




「レオン気にするな、マルコは俺に嫉妬しているだけだ」




「してねぇよ!」




「落ち着きなよマルコ。ショーも煽るなよ。


 でもまぁ、二人とも思い思いの加護をもらえたようでよかったよ。後は僕だけか」




「心配すんなよ。レオならきっと戦の神の加護をもらえてるって」




「そうだ、たとえ下位の加護だとしても俺たちは見捨てない」




「おい、今言うことじゃないだろ」




 ぼく達がそんな話をしていると静かに話を聞いていたエミリーがぼくの横腹をつついてきた。




「ねぇ、私のは気にならないの?」




「ごめんエミリー、別に気になってないわけじゃないよ。これから聞こうと思ってたんだ」




 ぼくはそう言って、誤魔化した。




「レオン私ね、癒しの神さまの加護をもらったんだ。だからねもしレオンが傷ついて帰ってきても治してあげるね」




「ありがとうエミリー」




 ぼくはそう言ってエミリーの頭を撫でた。同い年のエミリーだがなぜか妹のように感じてします。恐らくぼくが転生してきたせいで精神年齢が大人だからだろう。




「妹よ、兄のけがはいいのか?」




「そうだぜ、エミリー俺の怪我も治してくれよ」




「マルコ君の怪我は治してあげますけど、お兄ちゃんのはお金をもらいます」




「なぜだ?」




「いつも、家で本ばかり読んでかまってくれないからです」




「妹よ、俺は将来冒険者になるために大事な勉強をしているのだ。それはレオンやマルコ、みんなのためでもあるのだ」




「それでも、お兄ちゃんは最後になります」




 そんなこんなで、ぼく達は仲良くおしゃべりをして後、いつものようにぼくとマルコとショーンの3人で冒険者になるための特訓をして解散した。

















 守護の神の加護・守護に関わる魔法の発動を援助して、その性能を高める


 破壊の神の加護・放出系魔法の発動を援助して、その性能を高める


 先見の神の加護・契約魔法の発動を援助して、その性能を高める

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