第137話仲介忍者
夜影と才造、そして才造の兄が合流した。
「あぁ、えっと、いっそもうそっちは問わないよ?で、何?」
才造の兄の存在はただ話をややこしくするだけだと後回しにすることにした。
「主が狙っているのはワシらの子だ。戦力として、な。夜影に頼みがある。」
「こちとらならその薬をくらわないし、薬の狙いは才造だろうから主をどうにかしてこいってこと?」
話が恐ろしく早い。
夜影もそこまで聞けば言いたいことくらい察することができる。
ただ、十勇士がこんな状態だ。
いっそ一人くらいは産めるのではないか。
「主を説得するか、どうするかは任せるが…一人産めばもう一人となりそうでな。」
「一人は産むからこれ以上やると、って条件付ける?」
「いいのか?無理するな。子作りできるような状態か?」
それには口を閉じた。
理性皆無の才造に襲われた後だ。
本当の意味で望んだ子を授かりたい。
こんな形では無事に産めるかどうかもわからない。
「儂がお前らの主に話してやろうか?」
「ややこしくなるだけだ。失せろ。」
「いや、いいかもしれない。行くだけ行って、武雷の状態だけ把握するってのも助かるし。何より、一番安全なんだよね。」
才造も夜影に言われるとただの嫌悪で払うことができなくなる。
結局、物は試しで行かせることにした。
客として訪問した才造の兄に主は首を傾げた。
才造にどこか似ておるが、違うのはわかる。
化けておる、というのも少し違うような。
兄であることと、したい話を告げると目の色を変えた。
「一人はどうにか産めるかもしれんが、それ以上となれば十勇士は戻らん。」
「そう、夜影と才造が言うたのだな?」
「だが、無事に産めるかは約束できん。まともな子作りは望めんのはわかるだろう?」
それが何故なのかを問おうものなれば一つ鉄拳をくらわせてやれと才造に言われたが流石にそれはできなんだ。
才造がそれをいうとはなかなかに頭にきているのだろうし、面白い。
主は唸った。
「産んでも死ぬかもしれん。それ以前に授かれんかもしれん。夜影といえど無理な話よな?」
諦めさせられれば上等、最低でももう二度目をなくさなければならぬ。
「それを確実にするには…?」
「夜影が才造への恐怖を感じなくなれば。だがそれには時を要する。」
「どの程度。」
「それは二人次第だな。」
諦めはしない、ということか。
すまんな才造、夜影。
茶を啜り、目を細める。
「産んだとしても上手く育つか、戦力になる前に殺されるかわからぬ世だ。それに妊娠中は夜影は動けぬ。出産後も暫くは。育児に動きが鈍る。子が育つまで、まともにおれんぞ。夜影が動けぬとわかれば何処からでも責めてくる。」
それくらいわかってはいるだろうが一応押しておく。
いつかは気付かれる。
隠しておけるわけがない。
分身一つでどうにかできることでもないだろう。
「それは承知の上。」
「どちらにせよ、十勇士の主への忠義はどうであろうな?あの夜影も流石に…そう思わぬか?」
忠義がなんだ、と思うておっては忍は扱えぬ。
いつ裏切られるかわかったもんではない。
十勇士の忠義あってこその忍隊の忠義。
夜影の忠義あってこその十勇士の忠義。
忠義あってこその働き。
それは武雷の忍だ。
それは武雷の者なればようわかっておるはず。
「わかっておる。こうなった以上は。」
「ふむ。諦めぬか。暫くは姿さえ見えぬと思え。声に応えぬと思え。授かるまで、と思うなればようよう肝に命じよ。いつ、その首飛ぶかわからぬでな。」
そう言うともう言うことはないと立ち上がった。
脅しをかけたが、これで十勇士が戻って諦めると申せば上等。
夜影も、無理と思うならばこの首飛ばせば早い。
これが忠義なき忍と。
主は才造の兄が去ってから、ただ一人そのまま茶を啜った。
もし、己が忍に殺されたとしても。
ここまでやったのならば最後まで。
「敵襲!!」
その声に咄嗟に立ち上がった。
十勇士不在はもう既に外に漏れていたのか。
時間の問題だとは思うておったが、まさかこんなにも早いとは。
準備も間に合わなかったのか。
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