第121話消えたままに
頼也も才造も、息を詰まらせていた。
夜影は目を覚ましてすぐに六郎を迎えに走ったというのに、戻ってきたのは夜影の馬と六郎のみ。
夜影はあれから三日も戻ってこない。
六郎が命じたあの馬は見つけることが出来なかったのか、またも夜影無しに戻ってきた。
怪我を無視し梵丸と共に馬を連れて再び同じ地へ同じ道で探しに向かった六郎も、夜影を見つけることは出来なかった。
勿論忍隊総出で探したのだが、手掛かりさえも見つけることは出来なかったのだ。
「頼也、才造。」
小助と冬獅郎が二人をそれぞれ見下ろす。
夜影との距離や思いが近かっただけに、衝撃が重すぎたのだ。
いくら忍でも、やはりここは人と同じ。
頼也もわかっている。
いくら命令であったのだといっても、あぁも無理に起こすなぞ殺す気かと言われても仕方が無い。
それくらい動揺していたのだから。
「六郎様、私のせいだわ…私が、私が無理をさせたの!私が、あのような命令を…。」
震える蝶華を抱き締めて、
あの夜影がそう簡単にくたばるとは思えない。
きっと、何処かに身を隠し回復をはかっているのではないか。
そう思っていないと苦しかった。
それに、死ぬ時には影鷹を飛ばすのだと、申しておった。
その影鷹もない。
きっと、生きている。
そうであってくれ。
雨の中を、影鷹が飛ぶ。
大きな両翼を広げて、遠く、遠く。
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