第113話たまには…
「頼也、何でお前は半裸なんだ?」
「半裸はいいぞ?服を掴まれることは無いし、色々とな。」
長い髪を三つ編みにして遊ぶ夜影を手で止めさせながら、涼しい顔でさらりと答える。
「そ、そうか?ワシにはそう思えん。」
「半裸はいいぞ?」
「二度も言うな。変態と誤解されたいのか。というか夜影、いいのか此奴。」
指差しながらそう問い掛けると夜影は顔を上げて小首を傾げる。
「忍装束については決まりはないよ?」
何か問題でも?というように答える。
そうか、そうだった。
夜影も何気に下着一枚の時もある。
この二人は全裸でなければいいという口か。
「半裸はいいぞ?」
「半裸くらい大丈夫、大丈夫。」
「やめろ。お前らに問うたワシが馬鹿だった。」
そこへ小助と明朗がひょっこり顔を出して、何を話しているんだと興味津々に笑む。
「何故半裸なのかと聞いただけだ。」
「あぁ、それ俺も思った。目立つくね?」
「そういう問題じゃないと思う。でも俺的には才造も頼也も何で髪を切らねぇのかってことの方が気になる。」
それを言われて二人は顔を見合わせる。
特にこれといった理由はないが、なんとなく伸ばしている。
頼也に至っては膝くらいまでの長さである。
才造は長すぎると思えば切っている為、胸下あたりのまま。
「意味は無い。」
「同じく。だが、しいて言うなら…。」
夜影を同時に振り返った。
「影が好くからだ。」
「夜影が好むからだな。」
その答えに小助と明朗は呆れ顔を浮かべる。
この二人は意味は違えどもやはり夜影が好きなのだな、と。
「それにしても、頼也は褐色だなぁ。その髪色にその髪の長さに半裸にって目立つ要素多すぎ。」
小助に指摘されても頼也は表情を変えない。
「忘れたか?そもそも俺は目立つ方が仕事だろう?」
頼也は忍ぶよりも敢えて目立つ方の任務を任されることが多い。
囮になることも多い。
というのも、夜影と同じく殺傷は忍んでやるより目立ってやりたい派だからだ。
そして、そういうことに長けてしまっているのだから笑える。
「これが三番手なんだぜ?信じられるか?」
「可笑しいよなぁ。」
「忍は忍ぶことばかりでは無いとよくわかるだろう。」
才造は深い溜め息をついてだらりと身を伏せた。
「夜の字!それにお前ら!なんっで皆だらけてんだよ!!!」
十勇士四番手、
夜影を『夜の字』と呼ぶ。
怒る冬獅郎の手を掴み、夜影は引っ張った。
「たまにはだらけようよ。ね?」
「いやいやいや!!仕事溜まって、」
「過労死させたいわけ?あんなに働いたのに?」
頬を膨らませて頼也の膝の上で不満を訴える。
「夜の字は休んでていいけども!!お前らは別だろうが!!」
「うるさい奴だな。」
頼也は溜め息をついて三つ編みにされた自分の髪を解き始める。
「頼也、その髪引きちぎられたいのか?」
結局、冬獅郎も呑まれて此処でだらけることになったのだった。
この場にいなかった十勇士は勿論、働いていたのだが…。
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