第95話続・昇給試験
上忍と十勇士の案の定な結果を見届け、夜影はやっとだと溜め息をついた。
「これより、十勇士の昇給試験を開始する。壱、弐を選択し、壱は左へ弐は右へ移れ。」
やはり才造以外右か…。
これは才造から先に片付けた方が速いのだろうが、まぁ、副長と長の対戦ほど部下を楽しませるものは無い。
毎回の事ながらこればっかりは盛り上がって落ちた気を向上させる効果があるのを見逃せない。
「小助、前へ出ろ。奪う印は覚えているはず。」
「…当たり前。」
「では副長、開始の号令を任せた。」
「応。」
十勇士それぞれ奪う印は異なる。
いくら印を奪っても、それが己が奪うべき印でないのならば合格とならない。
小助が夜影の前へ出、互いに正座し礼をする。
才造の号令があってから立ち上がらなければならないのだが、此処のまず一歩で夜影の審査を外してしまえば後々痛いのだ。
小助が奪うべき印が何処に刻まれているのか、それさえわからない。
それを探り、奪う。
印の大小は夜影が予め十勇士の強弱に合わせて刻んでいる。
そして偽りのややこしい似た印を刻んだ囮もあるのだから、甘く見ていてはいけない。
強い者は印が小さく囮も多い。
弱い者は印が大きく囮も少ない。
だが、十勇士だからこその難易度であり、他の者には到底挑めない。
奪っても、審査に落ちれば不動決定。
夜影が手加減をしているのは十勇士もわかっていることだ。
この昇給試験はどんなモノを使ってもいい、どんな手段を取ってもいい。
忍術も問わない。
本気でかかれ、ということだ。
ちなみに夜影は十勇士一人が終える度に印を変える為にいちいち早着替えを行っている。
見た目はまったく変わらないが刻まれている印は変わっている。
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