第94話次なる試験は
昇給試験の準備がようやっと出来、夜影は首を鳴らす。
疲労がそろそろ溜まってきたことを自覚しながら、やはり休む暇なぞありはせず。
いや、あれども休みたくはないのだが。
昇給試験に参加出来ない組はただの見学になるが、丁度長期任務から戻った部下は休憩を取らせる為に後日別個で簡易化したものをやらせる。
日々部下の働きを見ている夜影からすれば、この昇給試験をする必要は無いに等しい。
しかし、一応決まり事であるからやるだけだ。
「これより、昇給試験を開始する。一日で終えれるよう、迅速に対応すること。終えるべき者が終わらない場合は失格とみなす。」
面倒臭いのでそういう事にする。
と、十勇士から文句が上がるが無視。
十勇士の試験が最後であるから、当然、間に合わない可能性が一番高いのだ。
夜影からすれば、どうせ昇給出来ないんだからいいでしょ、という適当さだ。
鍛錬をしていても昇給出来そうにない、ということを察している為である。
「初ノ段、始め!」
夜影の号令でまずは下忍らの分が開始される。
それぞれがぶつかり合い、勝者は半分。
次に中忍らを当たらせ、それも半分にし、下忍の勝者と中忍の敗者を当たらせそこで下忍が勝利したのなら昇給。
逆に中忍が敗北したのなら不動。
勿論、初っ端で下忍の敗北者は不動決定。
上忍を当たらせその敗者と中忍の勝者が当たり、中忍の勝者は昇給、上忍の敗北者は不動。
上忍の勝者は十勇士と当たり、此処で必ず全ての上忍が毎回敗者となるが、これらは夜影が戦闘を見て昇給か不動かを決定する。
十勇士が万一敗北した場合、それが互いに全力であったならば色々面倒な事をしなければならない。
最悪、十勇士降格、上忍が十勇士へ異動するかもしれない。
十勇士の試験は忍隊の長と二種類の事をする。
まず壱、忍隊の長から印が彫られたあるモノを奪う。
そして弐、忍隊の長を倒す。
これは選択式になっており、此処は夜影がこうでもしないと絶望的であると夜影が察した為である。
勿論、難易度的には壱の方がどう考えても易しいのだが、残念ながら十勇士でありながら忍隊副長でもある才造だけは強制的に弐に挑まされる。
壱を選択し、奪えたのならば僅かに昇給するが、奪えなかった挙句夜影を失望させたりなんぞした時には昇給どころか降給決定。
弐ではどちらかが倒れるまで続くのだが、倒されてしまっても降給にはならない。
失望させるようなことがあっても不動。
勿論、過去に壱・弐共に合格した者は居ない。
夜影が居ない年の昇給試験には十勇士の昇給試験はまったく設けられないので、夜影が居る年は定期的に僅かあるこれに十勇士は代々食い付いているわけだ。
だが、食い付いた割には不動である。
昇給試験に参加しない、ということも不可能であり、強制的に参加となるが重傷を負っている者は参加は任意となる。
ちなみに忍隊の長に昇給試験は無い。
昇給するかどうかは主が直々に見定め不定期に部下の知らないところでいつの間にか昇給していたりする。
「今年の昇給試験は期待出来そうに無いねぇ。皆、既にお疲れだし。」
「わかってて開始するのか。」
「仕方無いでしょ。もう他に日が無いんだよ。っと、初ノ段、終了!次!」
夜影は十勇士の昇給試験に切り替わるまでわかりきった結果を眺め号令をするのみ。
入隊試験を終えた者は見学しながら、先輩達の戦闘から何かを得ることに徹する。
見慣れた十勇士らは暇を訴る目で正座し寝るも良し、見るも良しな自由。
初めて目にする新規部下らは地味に楽しんでいるようだから来年これの参加をさせられることを頭に入れておけ、とだけ言っておいた。
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