第66話意外性を魅せつけて
「夜影、部下のことは把握しきっておるのか?」
「顔や名は兎も角、気配とそれの能力くらいは。」
気配は、その忍それぞれ特有の気配を夜影流に察知分けしているだけであり、また気配を消そうとも夜影にはわかる。
気配の要素は、『足音』『匂い』等の聴覚、嗅覚からの情報も含まれ、さらには勘の域に達しているが五感の次、六感もそれだ。
夜影に察知されない為には、そもそも実力等が通常の夜影を超えていなければ話にならないのだ。
本気になれば勿論超えていようが意味は成さないが、夜影が本気になることはまずない。
そして、能力はその忍の身体能力、得意不得意等のことを指す。
何を得意とし、何が信頼を持って任せられるか。
それを細かく把握しているのは夜影くらいのものかもしれない。
現在の忍隊の人数、班、気配、能力は覚えるが、それぞれの名や顔には全く興味が無く才造くらいしか覚えていない。
というのも、顔や名は覚えずとも気配で十分であるからだ。
「忍には何か決まりがあるのだろう?それはなんだ?」
「体重制限が御座います。」
「そんなものがあるのか!?」
「当然ながら。
何故かというのは簡単である。
天井からぶら下がるのに自分に負担がかからない重さがそれであるのだ。
また、長い間耐えられるように親指と人差し指の二本で米俵を持つ訓練は普通にする。
夜影の体重はかなり軽く余裕であるので、あまり体重については気にしていない。
が、夜影は人差し指で男を十四人程度乗せて耐えていたくらいだから、結構耐え忍ぶ力はある。(*第一章参照)
「だから太った忍は居らぬのか!」
「我が忍隊には体重制限が寸の筋肉野郎は居ますけどね。」
脂肪ではなく、筋肉で体重制限が寸というのはまた、どうなのか。
よいのだろうか?
主が地味にそこが引っかかっていたがふと、もしやと気付く。
「夜影、部下の体重把握しておるのか?」
「管理はしておりません。ただ、鍛錬を共にしてふと気付くので。」
成程、そういうことか。
「何故忍は装束が統一しておらぬのだ?黒ではないのか?才造みたく。」
「闇では黒は目立つんですよ。
実際、才造のように黒を纏い暗闇に乗じる忍は少ない。
夜影も黒だが、夜影は忍ぶよりも思い切って殺しにかかり目立ち相手に恐怖を与えるのを好む為に、他の色は仕事次第で着るかくらいのもの。
そもそも戦忍は、戦闘を得意とし戦場で主等の傍で戦い、時には足軽と共に活躍する者である。
勿論、戦場での諜報もするが。
夜影も才造も戦忍であるが為に、戦闘に向いた忍装束を着たがる。
「忍は人とは違うと聞くが、どうも納得がいかんのだ。」
「忍は『道具』です。ですがまぁ、主がそう思うのも仕方がないのでしょう。」
「というと?」
任務で敵陣の図面を描いてこいと命令されても面倒で敵陣まで行かずにその辺に隠れて嘘を書いた敵陣図面を差し出したり、敵陣に行ったはいいが恐ろしくてとても忍び込めず、ずっと物陰に隠れて震えて過ごす忍もいるのだ。
そこがまた、なんとも人間様みたいだ。
「ならば、同じではないか!」
「そう思って頂いても構いませんが、こちとらは『道具』ですから、人様扱いはやめてくださいね。」
そっぽを向く。
主は笑って頷いた。
「うむ!人というより、猫だからな!」
「そういう意味ではありません!」
くノ一は男共の補助・助手のような存在であるが、それはこの時代が『
くノ一は色気を使って男の口を割らせ、秘密を暴くのを得意とするが、夜影もまたそうでもある。
しかし、夜影はくノ一らとは違い
夜影が才造に初めに男だと誤解されたように、中性的であるせいで昔から
それも、自らの場合もあった。
体格や体力が女と男では差があり難しい問題であるのも、夜影は難なく通り抜けた。
体格は無いにしても、その体力は恐るべき。
『日ノ本一の戦忍』も『伝説の忍』も男であると
それ
忍の里で夜影が女であると明らかになったのは色修行に入ってからだった。
男共では潜入し難い時に活躍するくノ一は、時には
これは、隠れ
荷物に入って気付かれることはないのか?と思うがこれは『男尊女卑』が手助けとなっている。
そう、女の荷物の検査なぞ甘いのだ。
そうした面でくノ一らは活躍してくれてもいるのだ。
勿論、男共が女装して潜入することも可能だろう。
稀に才造が女装し忍び込み暗殺に向かうこともある。
だが、やはり滅多にしない。
そういう風に忍衆は忍んでいたりするのだ。
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