第50話帰還せよ

 門に、主の頭蓋ずがいと夜影の刀が帰りを見せた。

 それを触れて良いものかわからなかった。

 震えるこの手を伸ばすが、しかし、触れることは出来ず。

 嗚呼、この肩に手が置かれる。

「お前が触れなければ、誰が最期を埋める?お前でいいんだ。適任であろう……。」

 その声に、やっと触れることを許される。

 頭蓋を抱え、刀を引き抜き、主の墓へお連れし、その後ろにこの刀を刺しておいた。

 文句は無かろう。

 いったい誰が?

 否、ありえない。

 夜影が、なぞ。


 夜影以外に、思い当たらないのだ。


 目を閉じて息を吐いた。


 お前の生涯しょうがい一遍いっぺんの悔い…無いか?


 無ければいい。


 安らかに。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る