第49話追って探すは何者か

 死地となった戦場へ向かった。

 遅いとわかっている。

 それでも、その亡骸なきがらだけでも構わない、この手に。

 己は何者だろうか。

 どのつもりだろうか。

 そんなことはどうでも良かった。

夜影ヨカゲ!!」

 この声は叫ぶ。

 もう無い名を呼ぶ。

 何処にもそのしかばねはない。

 死屍累々ししるいるいの戦場だったこの地には、ただ、人間であったもの、刃、折れた旗等が落ちている。

 黒い身を探す。

 何処に、何処に?

「夜影!!」

 返答はないのだと、わかっていながら叫ぶ。

 嗚呼、嗚呼、何処だ。

 この目は、何かの情に囚われている。

 探せ。

 異常だろう。

 それでも構わん。

「夜影っ!!」

 何が悔しかろうか。

 何が、何を、何故?

 戦忍であろうっ!

 何故、あの一時を、この戦場で。

 散っても構わん。

 何故だ。

 何故。

「夜影…。」

 目を見開いて、この首は何処を見る。

 情に囚われたまま。

 あってはならぬと知っていた。

 知っていたとしても、呑み込まれる。

 これが、人の情なのか。

 それとも。

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