第40話消えた影

 虎の巣に、残影なく。

 成政ナリマサは、空より飛び参った影鷹を腕に乗せた。

 影鷹は何も言わずに、その忍の黒い布を差し出す。

 成政は泣きながら受け取った。

 影鷹は静かに飛び去って、やがて遠い空で影として絶えた。

 布を握り締めて泣いた。

 ただ、ただ、その知らせに泣いた。

 我が忍は命を絶やし、死地となった戦場で、これを最期に遺した。

 『忍は飛び道具』。

 それを思い出す。

 忍が言った言葉だ。

 飛び道具は行ったきり。

 そうだ、そうなのだと。

 今更、それを理解した。

 忍も影鷹も、主の元では死ねないのか。

 共に生きたいと願った己に忍は言った。

 『共に逝きたい。』と。

「忍殿……ご苦労であった…。」

 せめて、せめて安らかに。


 それを忍隊は遠目で確認した。

「長は、逝った。」

 副長から告げられる一言に、部下は頭を下げ、待った。

 また、長としてこの場に立つことを。

 啜り泣きが、くノ一から聞こえた。

 副長は険しい顔で、遠くを見た。

 影を見ようとして、しかし、見えなくて。

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