第29話いざ、尋常に悪戯致す!

「じゃ、門をぶっ壊すとこからね!もー、手当たり次第にぶっ壊しちゃってよ!」

「任せよ!はぁぁあああああ!!!参る!!!!」

「うわぁ、うるっさ!!いいね!いいね!思いっきりやって後で大将に怒られよ!」

 怒られる可能性はある。

 それをわかった上で、忍はもう面倒になったのもあって、主と共に出撃。

「な!?門が!!」

「はいはーい!『虎』が参るよ!」

「『猫』もな!」

「あれ?こちとら猫なんだ!?」

 派手な一発、門へと叩きつけられる。

 第一門突破!

「ぶっ壊せー!」

 楽しげにはしゃぐ忍に部下は屋根の上から眺める。

「やけに楽しそうであられるな?」

「ヤケになってるだけでしょうな。」

「よいのでは?惚れた相手を殺したのが今響いておられるのだろう。」

「我らも参加するか?」

「…それも有りだな。」

 部下も部下でまた参戦。

 弾薬倉庫を見つければ、花火だといって大爆発させる忍に、薬小屋だと言ってそれらをめちゃくちゃに荒らす主に、部下の方は金目の物を盗んでみたり、武器庫から色々と盗んだり。

おさ!宝は確保!」

「よくやったね!売るよ!」

「はっ!」

 元気のいい忍である。

 一方、部下の中でも下っ端な者は先輩や上司、主を見てどうしたものかと思うまま。

 流石にその勢いには乗れない。

「先輩やおさ…凄いな。」

「よく軽々とやれるものだなぁ。」

「あぁ!あの先輩まで一緒に!」

 高みの見物となってしまっている。

 これはこれで楽しいらしい。

 忍らとその主の大暴れにより、最早もはや普通に城を攻め落とすよりも大惨事になりつつある。

「楽しいな!忍殿!」

「でしょう!?こんまま食料庫もぶっ壊しときましょ!!」

「うむ!」

「長…片っ端から大事な倉庫をぶっ潰していかれるなぁ……。」

「鬼畜だ。完全に戦が出来ない状態にしようとしておられる…。」

 そろそろ部下たちも手を止め始めて二人を眺め直す。

 部下らの興味は宝、金。

 金に代わるものは全て持っていこうという顔。

 その作業が済めば満足である。

撤退てったい準備!騎馬きばが帰って来てるわ!」

 部下にそう叫ぶ忍に、部下は頷く。

「もう、我らはいつでも撤退可能に御座います!」

 叫び返せば忍は満足気だ。

「んじゃ、忘れ物だけはしないように、撤退!」

「了解!」

「さて!帰るよ!主!」

「うむ!」

 そして影と煙を巻いて皆が引き上げれば、残るのは瓦礫がれきと化したものばかり。

 それらに巻き込まれた死屍ししも、騎馬が到着した頃にはそれらを大層驚かせた。


「大将!朗報か悲報か、御報告を致します!」

「?」

「実は、」

 その報告を聞いた源次郎ゲンジロウは豪快に笑った。

 怒りもせず忍の頭を撫でた。

「よくやった!流石だ!」

「でしょう!?もうやるしかないっスよね!?」

「うむ!それでこそ我が軍の忍よ!」

「それは意味わかんないんですけど、大将もやりますよね!?」

「今度はわしも混ぜい!」

御意ぎょいに!」

 謎の盛り上がりがしばらく続いた。

 大興奮なのは主も忍も、その部下も変わらない。

「売った?」

「はい!このがくに。」

「給料に振るからね。全部!」

 珍しく忍らに大きな歓声が上がったのだった。

 いつもの給料の何倍となるのか。

 それを喜ばずしてどうするのか。

「あ!大将もやりたがってたからまたどっかの軍荒らしに行くよ!そん時もまたちゃんと金目のもの盗むよ!」

「勿論に御座います!」

「了解!」

「流石長!」

 完全に忍の勝手な行動だったが、それを良しとされればもうやらないわけにはいかない。

 悪戯のいきを超えて其れだが、忍にしてみればこれこそ悪戯だというのだから、モノの大きさが計り知れない。


 その後、圧倒的優勢にて戦を推し進め、二度目の襲撃にてその城を正しく攻め落とした我が軍は、更なる脅威を周囲に見せつけたのであった。

 この軍はうわさで戦前に破壊の訪問を行うとして警戒されたのは言うまでもない。

 しかし、警戒も何の役に立つだろうか。

 この忍の腕はここでも発揮するのであった。

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