第19話 仲間に
「全てを極める……俺が……?」
自身の足元に広がっている巨大な根っこを見下ろしながら、隆也は、フェイリアの言葉を反芻していた。
それまで自分の出来ていたことを考えれば、少なくとも、加工系統のスキルについてはある程度の素質があるのだろうと、隆也は予想をつけていた。
だが、彼にとっても、まさかここまでの結果になるとは思わなかった。
生産系統の素質にどのようなものがあるのか、それは再び皆に教えてもらう必要がある。ただ、ゲームの知識などから引っ張り出して考えるとすると、先程、受付嬢のミッタからレクチャーを受けたような薬の調合だったり、武器の開発といった鍛冶スキルがそれに当たるのもかもしれない。
隆也は、今一度、ツリーペーパーが示した隆也の潜在能力である『木』の全体像を眺めてみる。
地中を見ると、それはもう素晴らしいぐらいに太い根っこが広がっている。細かく見てみると、無数に枝分かれしている細い根っこのほうには実のようなものもついていて、それがわずかな燐光を放っているものもいくつかある。意外に細部もキチンと描かれているようだ。
「ツリーペーパーは、それぞれの個体より吸収したエネルギーを解析して、どのような素質が眠っているのかを『一本の木』にして表現したものじゃ。空高く伸びるような背丈の高い木であったり、無数の葉っぱをつけて扇形に広がったり、もしくは枝に果実を付けたり、な。それによって素質の判断をしていく」
「でも、俺のこれは、『根っこ』しかないですよ? 上半分は何か切株みたいになってて、葉っぱも枝もなにもあったもんじゃないですし」
隆也が紙の上半分を示すとおり、彼の『木』は木というよりは単なる切り株だった。これだけ立派な根が地面に眠っているのなら、それ相応の幹や枝を備えているはず。
しかし、まるで何者かに根元から伐採され持ち去られてしまったかの如く、地面より上の分はまっさらな状態だったのである。
「お前がそれだけこの世界でも珍しい人間ということだ。確かに上半分の描写については疑問だが、素質がない部分の描写は、けっこういい加減に出来ているらしいからな」
「そうだぜタカヤ。お前なんてまだマシなほうだ。俺の測定のときなんて、この紙『実は三歳児ぐらいなんじゃねえか』って思うほど、単純な絵を描きやがったからな」
「それは仕方なかよ、だってロアーやもん」
「だな、ロアーだから」
「おい」
こんなシチュエーションでも、ロアーはひどい言われようである。では、リーダーのことをそこまで言う二人の『木』はどんな立派なものなのか気になるところだが、
「タカヤ、合格だ。妾達『シーラット』は、お前を新しい仲間として迎える……というか、是非来てくれ。すこし特殊だが、これだけの素質を持ったヤツを手放すなど考えられん」
それは、これからの活動でおいおい知っていけばいいだろう。
隆也は、もうこの人達の仲間になったのだから。
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