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 ……もう、ダメかもしれません。


 ねたきりで、まともに身体を動かすことすらできません。かろうじて、ペンをもてることだけが救いでしょうか。


 ごしゅじんさまは、わたしを救おうと村の人に意見をもらいに行ったりしているようです。でもかいけつさくはないみたいで、ごしゅじんさまはいら立ちをつのらせています。


 ああ、どうかごしゅじんさま。

 わたしのために、そう怒らないでください。悲しまないでください。


 一二八年間、わたしはそうじをしながら、だんなさまが帰ってくるのを待ちつづけました。


 ミランダも、ケリーも。

 同期はみんな、こわれてしまって。


 にんげんの使用人たちは、みんなおやしきを去ってしまって。


 残されたロボットは、わたし、TypeⅢ-Ivyだけ。


 ひとりぼっちで、おやしきを守りつづけて、とても寂しかったけど。


 雪のまいちるあの朝、わたしは、ごしゅじんさまに出会いました。

 その日から、わたしの毎日はかがやきはじめました。


 ごしゅじんさまとともに、この十数年間をともに歩めて。


 わたしは、それだけで満足です。


 ああ、でも最後に少しだけ。


 プレゼントと、名前を……。


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