6
連日にわたって雪が降りしきる、ある日の午後のことでした。
わたしが廊下でモップ掃除をしていると、庭先から、ご主人様の大きな声が聞こえてきました。
「アイヴィーっ! アイヴィーっ!」
まさかご主人様に何かがあったのではないか、とわたしは大急ぎで玄関へと走り、そしてお庭へと続く扉を開けました。
「ご主人様、ご無事で……」
扉をあけたすぐそこに、ご主人様が戸惑った様子で立っていました。目尻には涙が浮かんでいて、銀色の髪の上に、白い雪が降り積もっています。
「ご主人様、どうされたのですか……?」
頭に積もった雪を振り落としながらわたしはそう尋ねて、そして気づきました。
ご主人様の腕の中に、傷だらけのシロキツネの子供が抱かれていたのです。
「どうしよ、アイヴィー。おにわで、みつけて。きずだらけで、この子……」
ご主人様に話を伺ったところ、このシロキツネの子はお庭で倒れこんでいて、数羽の鳥に襲われていたとのことです。弱ってはいたものの、幸いなことにまだ息があり、致命傷は負っていないようでした。
「どうしよう、アイヴィー……」
わたしをうるうるとした瞳で見上げるご主人様を見て、わたしはかつてご主人様を拾ったときのことを思い出していました。ご主人様は、どうやら心優しい子に成長してくださったようです。
わたしはそのことを嬉しく思いながら、シロキツネの子供をお屋敷へと招いて、身体を温めて、そしてご主人様と一緒に看病をしたのでした。
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