おでんの卵争奪戦
俺はおでんが好きだ。いや、厳密に言うとおでんに入っている卵が好きだ。正直それ以外はどうでもいい。とにかくおでんの卵を日々追い求めている。
今日は家族市場というコンビニでおでんの卵を一つ購入。
軽快な入店音と共に店を出る。意気揚々と帰宅しようかというその時の事だ。
「その卵、貰い受ける!」
「何奴!?」
サラリーマンと思しき男が道をふさいでいる。綺麗な七三分けに黒縁眼鏡。とにかく怪しい男だ。とにかくこの卵を狙う者……誰かは知らないが俺の敵であることは間違いないだろう。何故なら、外から見ただけではこのおでんBOXにピンポイントに卵だけが入っていることはわからないからだ。この男、見た目とは裏腹になかなかのやり手だ。
よって男をミステリーエッグハンター(仮)と名付けることにした。我ながらなかなかのネーミングセンスであるとこのように自負している。
さて、この
ここで一つ教えておこう、せざるを得ないだ。「せざる負えない」ではないしましてや「せざる追えない」でもない。これは昨今SNSなんかでよく見かける誤用だ。間違ったまま歳を重ねると恥ずかしい思いをするぞ!
それはさておき男との対話を開始する。
「この卵、そこで売ってますよ」
「おおそうか……それはすみませんでした」
「ふっ、いいってことよ!」
二人の男はがっちりと握手を交わした。
これが想定していたシチュエーションだ。
だが現実はそこまで甘くはない。
スーパーで売っている安スイカのように、果肉と言う名のリアルはそこまで甘くないのだ。
「この卵、そこで売ってますよ」
「おおそうか……それはすみませんでした。などと言うとでも思ったかァ! その卵貰い受ける!」
「ふっ、いいってことよ!」
この男はどうあっても「その卵、貰い受ける!」が言いたかったようだ。
ならば受けて立つのが挑まれた男としての責務だろうな。
久しぶりに、全力出すか。
「来い! そんなしゃもじなんて捨てて掛かってこいよ!」
「ウオオオオオオォ!!」
第一部、完。
俺達の戦いはこれからだ。
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