弁明者と証言者
1
「まずは、ギルドにクレーム入れておかないとね。」
教会を後にしたレイナは、大通りを二つほど挟んだ先にある、冒険者ギルドの支部へやってきていた。
早速ギルドの中に入り、受付へと向かう。
「映像通信で、ギルドサポートのアンナを呼んでもらえる?」
ギルドの指輪を見せながら、受付に問い合わせるレイナ。その声に少しの憤りが混じっている。
「はい、少々お待ちください。」
受付嬢は一瞬たじろいだが、すぐに後ろを向いて大きな機械を動かし始めた。
その姿を見ながら、少し声を荒げてしまったことを反省したレイナは深呼吸をする。
「お待たせしました。こちらをどうぞ。」
「どうもありがとう。」
受付から書類サイズの板を渡されると、レイナは落ち着いたのかやさしくお礼を言う。
そして、レイナはその板をのぞき込む。そこには女性の姿があった。
「ちょっとアンナ!」
「どうしたんですか、レイナさん。映像通信なんて。」
キョトンとした顔をしているアンナと呼ばれた女性。その表情を見てレイナに再び憤りの炎が生まれる。
「あなた、この依頼の条件、黙ってたでしょ!」
再び声を荒げるレイナ、周りにもたくさんの人が居るが、もう気にしてはいない。
「・・・なんでも受けるって言ったじゃないですか。」
「手ごたえのある依頼って言ったのよ!パーティー用なんていう重要な条件はどうでもいいなんて言ってないわ!」
ばつの悪そうな表情でアンナは口を開く。
「この依頼、スイーパーでも条件がきつい依頼で、困ってたんですよ。そこへ現れた救世主レイナ様!!」
アンナは大仰に両手を広げ、そのまま左手を胸へ、右手をレイナの方へ差し向ける、
「都合よく持ち上げるな!」
その態度にレイナも相当苛立っている。
「でもでも、レイナさんもお友達と会えるじゃないですか。」
「私はいつでも会いに行けるわよ。」
アンナのどんな言い訳も、レイナは軽くあしらう。
「この依頼の報酬、ギルド負担で倍額貰うわよ。ギルド長には私から話すわ。」
「うぅぅ・・・。」
しょんぼりとしているアンナにレイナはさらに追い打ちをかける。
「この依頼が終わったら私が依頼出すから。」
レイナは白紙の依頼書をアンナに見せる。依頼書にはギルド指定依頼とある。
「な・・・何の依頼ですか?」
「あなたの給料減額。」
「そ、そんなぁ!」
ギルド指定依頼は冒険者登録されている以上その効果を発揮する。ギルド職員も冒険者登録されているため、こういった使い方も可能になる。
「さぁて、これでやる気が出たわ。いい運動が出来そうね。」
最後の一言をアンナに聞こえるようにしゃべった後、レイナは映像通信を切った。
そして、その板を受付に返却する。
「あの、レイナさん。どうかされたんですか?」
先ほどのやり取りを見ていた受付嬢が心配そうに話しかけてくる。その気遣いに、レイナは笑顔を見せる。
「大丈夫、何でもないわ。ありがとう。」
受付嬢に軽く手を振って、レイナは足早にギルドを出る。彼女に聞こえていたと言う事は、他の人にも聞かれていたと言う事だ。流石にそれは恥ずかしかった。
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