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「ところで、この依頼、随分前からあったの?」

「はい、2か月程お待ちしていました。」

「大丈夫だったの?」

直接は関係ないのだが、少し申し訳ない気持ちになるレイナ。

「街の周りは、自警団で何とかしてましたが、周辺から来られる商人の方が襲われる事例が多かったです。」

「商人ね・・・。その間、物資が来なくて大変じゃなかった?」

レイナの問いに、ロムは首を横に振った。

「商人も慣れたものでしたね。商品は分割して到着するようにして、襲われた人達はとにかく野盗の言う通りにして命をつないだそうです。」

「さすが、そのあたりも織り込み済みって事ね。」

商人のリスク管理に感心するレイナだった。

「で、野盗の出没する場所とか、アジトとかの情報はある?」

レイナはロムに尋ねる。

「いえ、地図でお見せした被害状況が唯一の手掛かりです。」

「そっか・・・。」

レイナは残念そうに言う。ロムは続けて話す。

「でも、襲われた商人はまだこの街に滞在してますから、その方々からお話を聞いてみては?」

「まだ居るの?そうね、そうするわ。その商人はどこにいるの?」

「商人ギルドに宿泊してるそうですよ。」

「商人ギルドかぁ・・・。行った事ないわね。」

「大丈夫です。これを渡せば、お話を聞いてくれると思いますから。」

不安を漏らすレイナに、ロムは商人の滞在場所を書いたメモと紹介状を手渡す。

「紹介状?」

「ええ、商人は、繋がりを重視しますから。」

それを受け取ったレイナは、腰の道具入れに書類をしまう。

「ありがとう、行ってみるわ。」

「ええ、お願いしますね。」

一通り、話が落ち着いたところで、レイナとロムは互いに一息ついた。

「ところで、ロム。一つお願いがあるんだけど、いいかな?」

そう話を切り出すレイナ。にこやかな顔をしてロムが聞き返す。

「何ですか?」

「今日はここに泊めてくれないかな?」

「ええ、もちろんいいですよ。」

レイナの願いを快諾するロム。

「よかった。ありがと。」

ロムの好意に、レイナは感謝する。

「それじゃあ、私はちょっと情報収集と、準備に行くわ。出発は明日かな。」

「そうですか。では、私はレイナの寝室を準備しておきますね。」

そう言って、席を立ったレイナを、ロムはにこりとほほ笑んで見送った。

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