第2話 女子禁制インカレと、二つの出会い

 サークル勧誘オリエンテーションは、中々に大変だった。


 でも、こんなにちやほやされることなんてめったにないし、楽しかったのも事実だわ。


 何よりも…。


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 地方公立組の子が真っ白に燃え尽きちゃったのを見た後、私達は勧誘テント列の入り口に向かった。


 既にオリエンテーションは始まっているようで、アメフト部のガタイのいい男子に囲まれてヒイヒイ言っているもやし体形の男子が目に入ってきたわ。


(全く、これだからガリ勉はモテないのよ)


 そんな男子の嘆きをスルーして、私達は勧誘テント列の先へと進んだ。


 リサも既に入りたいサークルが決まっているといってたけど、実は、私もすでに入りたいサークルは決まっているの。


 インカレのテニスサークル。


 「イカコマ」の残念男子にははっきり言って興味がわかないから、他大学のイケメン男子を捕まえて、その子を虜にしてやるの。


 そのつもりだったのに。


「はあ?コマ大女子はダメって、どういうことなのよ?」

「すみません。それが、うちの長い伝統でして」

「意味わからないんですけど?」


 私が目星をつけていたサークルは、コマ大女子禁制のサークルだったらしい。


「コマ大女子がいると、うちのサークルの女子大の子たちがみんな委縮しちゃうのです」

「女子大?」

「ええ、うちは、コマ大男子と女子大の学生との間のインカレサークルですから」

「ふーん、そう。ならいいわ」


 私は、そのサークルを見切って、立ち上がった。


 実際、インカレ先が女子大だったら、もうそのサークルには用などない。


 私のお目当ては、他大のイケメン男子なんだから。


 でも、少しだけ、嫌な気分。


「今どき男女差別なんて、どうかしているわ」

「それを言うなら、下調べしていなかったミカも悪いでしょ。私たちの学校なら、先輩とのコネで事前情報収集ぐらい普通にできたでしょうに」

「リサ、それは言わないでよ。私は、敢えてサークルのリストと基礎プロフィール以外何も目を通さなかったのよ。だって、何もかもわかってしまったら、面白くないじゃない?」


 リサが、呆れたようにため息を吐く。


「はあ、ミカらしいわね」


 可愛いルックスの癖に反応がクールビューティーすぎて、どこかムカつくのに、その様子もちょっと可愛い。


「言ったな、リサ。このー」


 私は、思わずリサの頭をぐりぐりと撫でまわす。リサは、くすぐったそうだが、まんざらでもないようだ。

 うん、やっぱり可愛いね。さすが、私の親友よ。


 それはさておき、私は本気でサークルを探し直さなければならない。


 また男子がアメフト部のスクラムに囲まれてヒイヒイ言ってる声が聞こえてくる。正直耳障りだから、ああいう勧誘の仕方は考えて欲しいものだわ。


「どこがいいかしら…」


 次の候補は、すぐ見つかった。


 だって、あんなところに、明らかに知的なルックスの非コマ大系イケメンがいるんだもの。


 あそこしかないわ。


「待ってろよ、私の青春!」

「ミカ、考えが声に出ているわ。一目惚れにしても、ちょっと分かりやすすぎ」


 リサがフッと笑う。


「あ、リサ、笑ったな、この」

「そのぐりぐり、私には似合わないわよ?」

「いや、似合ってるし」

「と、ともかく、行きましょ。せっかくお目当ての男が見つかったんだから」

「またまたそんなことを言う。ぐりぐり」

「わざわざ口に出して言うかしら?」

「だって、リサ、可愛いから」

「か、可愛くなんかないし」


 リサとそんな風にじゃれ合っているうちに、イケメンがいるテントの前にたどり着いた。


 予定通り、インカレのテニスサークルだ。予定調和とは、こういうことを言うのに違いないわね。


「とりあえず、座って話を聞くとしましょうか」

「そうね。私は入らないけど」

「野暮なことは言いっこなしよ」


 その時。


 私の隣の席のやや肥満気味の男子学生の目が怪しく光るのを感じたの。


「ブヒッ」


 まるで豚みたいな笑い声を出して、ニヤリと笑う。


 これは、嫌な予感しかしないわ。


「ねえ、席を変えな…」


 その発言は、衝撃的な展開で遮られることとなる。

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