第78話
ベッドでユカを寝かしつけながら石嶋は、意外なこともあるものだと今日の病院での一件を思い出していた。
5人がみんな同じ高校だったとは…。でも、友達に囲まれたナミ先生は、診察室での威厳のある女医とは違って、女子高校生のようで可愛らしかった。また、新たな一面を発見してしまったようだ。野球ばかりやっていた自分だけど、高校時代にナミ先生とすれ違っていたかもしれない。どんな女子高校生だったんだろう。やっぱり可愛かったんだろうな。希久美もテレサも居たのに、石嶋はナミの事ばかり考えていた。
泰佑は病室のベッドの上で、久しぶりに会った希久美を思い返していた。
やっぱりあいつはかっこいい女だ。しかし自分は情けない姿を見せてしまった。こんなのは良くない。なんか希久美の前でこれ見よがしに自分の衰弱を見せつけて、同情を誘っているようだ。おとなしく養生して、一から出直そう。希久美を男として愛せないのは、本当につらいが、石嶋ならいい奴だし、きっと希久美を幸せにしてくれるに違いない。病室の薄い布団を頭から被り、何度も自分に言い聞かせていた。
薔薇の花弁が浮いているバスタブに浸かりながら、テレサはワインを飲んでいた。
今日はなんか面白かったな。あたしこんなドタバタ劇が大好き。このままなんの決着も迎えないで、いつまでもドタバタ出来れば楽しいんだけど…。でも、ちょっと気になるな。5人でしょ。男の数と女の数を考えるとどうやっても女がひとり余る計算だわ…。まあしょうがないか…所詮、世の中いす取りゲームだからね。テレサはグラスに残ったワインを飲みほした。
宿直室で論文を読むナミ。今夜はやけに長く感じる。
石嶋がつき合っている相手が希久美であることに少なからぬショックを受けていた。希久美は親友だから、なおさら親友の付き合っている男と恋愛なんかできるわけない。でも、希久美は石嶋をどう思っているんだろう。石津先輩とばかり言い争っていて、石津先輩と居る時にはヒロパパが眼中にないような気さえする。
そういうわたしは、自分はヒロパパとばかり言い争っている。冷静になろう。そう私は医師なのだから。そんな考えにふけっていると、携帯が鳴った。相手は希久美であった。
「ナミ、私決めたわ。協力してくれる」
希久美から聞いた協力依頼内容にナミは度肝を抜かれた。
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