・・・

 それから一刻は、行く先々の道に、いろいろな目印を作った。


 ある街の中では、飲みかけのミネラルウォーターから千切り取った、ひと掴みの水を宙に浮かべた。


 ある川のほとりでは、木のそばに浮かんでいた何枚かの落ち葉を、ぐるりと円の形に並べた。


 ある砂浜では、掴んだ砂を少しずつ宙に撒いて、両腕をいっぱいに広げた幅の、大きな波模様を描いた。




 そうして、自分だけの道標を残しながら、オレンジ色の町を、いくつもいくつも渡り歩いた。

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