第7話 そして・・・
「早見さん、こんにちは。というのも変ですね・・・」
「意識のある状態で会うのは、初めてですね」
初めて会った時と、僕のところに除霊に来た時の惟子さんは、トランス状態。
肉体は、別にあった。
手持ち品は、全てコピーのようなものだ。
でも、もしもの時のために、身分証明証だけは、本当のようだ。
普通は、対象者となる体に入り込むのだが、今回のはすでに霊。
それは出来ない。
「すいません。早見さん。私はまだ未熟でした。
そのため、あなたのお姉さんの霊を、強制的にしか成仏できませんでした」
「いや、僕がほっておいたから、いけないんだ。迷惑かけてごめん」
僕は、頭を下げる。
「そんな、謝らないでください」
惟子さんは、逆に頭を下げる。
「部屋、血みどろですね。ごめんなさい」
「あれは、一時的なものだ。すぐに消えるよ」
「そうなんですか?」
惟子さんは、父である太郎さんを見る。
太郎さんは、頷いた。
「本当は、私自身が行きたかったのですが、父からそれは止められて・・・
それで、トランス状態にしたのです」
「確かに、君の歳だと、まだ難しい霊だったかもね」
「ええ」
惟子さんは、嘆いているようだ。
あの朝、庭で倒れていた惟子さんは、トランス状態。
本来なら、さほどの苦しみはないはずだ。
でも、苦しんで見せて、死んだように見せたのは、
僕とは断ち切りたかったのか?
「娘の惟子は、今回が初仕事でした。それが成功したのは、
早見さん、あなたのおかげです。ありがとうございました。」
太郎さんに頭を下げられる。
「ところで早見さん、あなたご両親は?」
太郎さんの問いに、僕はその名を告げた。
太郎さんは、とても驚愕していた。
「私たちには、足元にも及びませんね」
「早見さんの家系は、凄いんですね」
ふたりは感動していた。
「それだけの力がありながら、どうして活かさないんですか?」
「答えは、ひとつです」
しばらく間をおき、僕は答えた。
「私は、おだやかな人生を送りたいんです」
それだけを答えた。
僕の仕事は広告関係・・・
それは表向き。
本当は、商業誌で漫画を描かせてもらっている。
外へ出れば、どうしても自分の正体を知られてしまう。
それを、避けたかった。
それで、この道を選んだ。
もっとも容易ではなかったが・・・
こうして、事件は解決した。
というのも変だが・・・
事件後、一つ変わったのは、
僕の彼女いない歴に、ピリオドが打たれたことだ。
今は封印している僕の力は、彼女を守るために使おう。
それまでは・・・・
Fin
未熟な霊媒師 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu
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