第6話 正体

「状況はわかりました」

「そうですか・・・」

僕は、太郎さんに言わなければならないことがある。


「そろそろ。本当の事を話していただけませんか?」

「本当の事ですか?」

「隠さなくていいです。惟子さんが言った【ごめんなさい】の意味と、

あなた方が言った【娘のためにありがとうございます】の意味です。」

「と、いいますと?」

「【娘を一人前の霊媒師にしていただいて・・・】では、ありませんよね?」

太郎さんは、ため息をついた。


「やはり、わかっていましたか・・・さすが、同業者ですね」

「ええ、もっとも僕・・・いえ、私は本格的なものではありませんが・・・」

「あなたは、悪霊の存在を知っていたんですね。早見さん」

「はい。とっくに気付いていました」

「でも、自ら除霊はしなかった。悪霊でも、お姉さんだからですね」

「はい。確信はありませんでしたが、姉というのはわかりました。

肉親の本能ですね。」

さらに、話を続けた。


「生き別れなので、姉の事は聞かされていませんでしたし、確認も取れません。

でも、惟子さんの言葉でわかりました」

「私が、教えたんですけどね・・・」

「惟子さんの、【ごめんなさい】は、穏やかにではという意味でしょう」

「そうですね。さすが早見さんも、お分かりですね」

ここで、僕は最後の疑問を、太郎さんに訊く。


「【娘のためにありがとうございます】は、どういう意味ですか?

そろそろ、教えていただけませんか?」

「それですか・・・それは・・・」

「惟子さんは、生きていますね」

「そこまで、分かりますか?」

「私も、霊媒師ですから・・・」

僕は太郎さんを見る。


「惟子、こっちへ来なさい」

惟子さんが現れた。

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