第5話 あの夜
「繰り返しになりますが、あなたに取りついていた悪霊については、
惟子から聞いていますね」
「はい、確か僕の生き別れの姉で、プレイガールだったと」
「その通りです」
「惟子さんは、私の友達だったと言っていましたが」
「それはウソです。わかりますよね?」
確かに僕の姉の友達としたら、計算が合わない。
普通に考えたら・・・
「姉の友達と言えば、あなたも気を許すと考えたんでしょうね」
確かに気がゆるんでしまった。
否定はしない。
「あの夜、何があったか気になりますね」
「ええ。気にならないと言えばウソになります」
「お見せしましょう」
太郎さんは、そういうと水晶玉を取りだした。
何やら呪文を唱えているようだが、聞えない。
しばらくすると、水晶玉に映像が浮かび上がった。
僕の部屋の映像だ。
太郎さんに、言われるまま覗き込んだ。
害はないようだ。
『お願い、それ以上悪さをしないで』
『誰なの?あんた』
『私は、霊媒師の惟子。あなたを成仏させるために来た』
『思い出した。あんた、私の友達と言って、弟に近づいてきた子ね』
『ええ』
『ほっといてくれる。弟をどうしようと、私の勝手でしょ!』
『勝手じゃないわ。どうして悪さをするの』
僕は全く覚えていない。
「結界を張ったんですよ。惟子が・・・」
太郎さんに言われ、納得した。
『私は男をもてあそぶのが快感なんだよ』
『どうして快感なの?』
『男も女を弄んでるでしょ?女が男にして何が悪いのよ』
『悪いわよ。人の心を踏みにじるなんて最低です』
『じゃあ、どうする気なの』
『意地でもあなたを、成仏させる』
『あんたみたいな、未熟な霊媒師に何が出来るの』
『できるわよ。これは私の卒業試験だもの』
惟子は、ふところから刀を取りだした。
「もろ刃の剣です」
「えっ」
「これを使えば、霊は成仏させられます。強制ですが・・・でも・・・」
「でも、自らの命も落します」
太郎さんの言葉に僕は何も言えなかった。
『覚悟してくださいね。お姉さん』
『やれるものならやってみなさい』
悪霊が言い終わる前に、惟子は刀を振りかざした。
その瞬間、部屋中に血が飛び散り、悪霊は消えた。
そして惟子の体は、外へ投げ出された、
しばらく映像が続いていたが、よく覚えていない。
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