第3話 もうう1人の霊媒師

「失礼ですが、あなた様のお名前を教えていただけますか?」

その言葉に僕ははっとした。

確か伝わっていると思ったが、僕の思い込みだったようだ。


そうだ。名を名乗らないと礼儀知らずになる。

「僕は・・・早見誠二です。22歳です。」

「お仕事は?」

「広告関係です」

「そうですか・・・」

太郎さんは、複雑な表情をしている。


「早見さんでしたね。早見さんは、守護霊は知っていますね。

「はい、知っています」

守護霊。その人について、守ってくれるもの。

だいたいは、ご先祖様が多い。


「失礼ながら、早見さん。あなたの守護霊の力はとても弱い」

「そうですか」

納得してしまう自分が、そこにいた。


「惟子から聞いたと思いますが、あなたにとりついた悪霊の力はとても強い」

「確か、惟子さんから生き別れの姉と聞きました」

「もう少し、詳しく伺っていますよね」

「はい」

でも、口にする気はなかった。


「以前はあなたの守護霊の力でも、持ちこたえていたのですが、

悪霊の力はとても強大で、さすがの守護霊でも、太刀打ちできなくなりました」

女は逆上すると、怖いからな・・・


「でも、どうして惟子さんが僕に?無関係だから、ほっておけばいいのに」

「そこが私の責任なんです」

「えっ?」

太郎さんの言葉に、僕は息を飲んだ。


先月、私と娘が歩いていると、偶然あなたを見かけました。

「僕をですか?」

「その時既に、あなたの守護霊は限界に来ていました。」

一か月も、持ちこたえたな。我が守護霊。


「その時、娘に言ったんです」

「何をですか?

「あの男の人、つまり早見さんですが、『あの人を助けられたら、お前も一人前の霊媒師だな』と・・・」

無責任な親だ。


「今、無責任な親と思いましたね」

「いえ・・」

「隠さなくても、それくらいはわかります」

さすが霊媒師だ。生きている者の考えくらいはわかるか。


ということは、僕の素性ももう、ばれているだろう・


「でも、僕は惟子さんに助けれる義理は?」

「それがあるんです」

太郎さんは意を決したように、発言をした。


「覚えていませんか?2か月前の事を」

2か月前の事?

僕は記憶の糸をたぐり寄せた。

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