第2話  責任

後日、彼女の、いや惟子さんとしておこう。

所持品だった学生証をたよりに、自宅を訪れた。


いかにも、という感じだった。


霊媒師について簡単に説明すると、死者と交信のできる、

イタコのようなものだ。(多分)


霊媒師の脳は、常人とは構造が真面目に違っているらしい。


ただ、霊媒師の家に生まれたからと言って、誰しも霊媒師にはなれない。

やはり、他の人にはないものが必要となる。

惟子さんには、それがなかったのか?


故に、その力が未熟だと、逆に死者の霊に取りつかれてしまい、

最悪、命を落とす。


惟子さんが、そうだったのだろう。


霊媒師の言えば、胡散臭いのも多いが、惟子さんの実家は行列ができていた。

確信はないが、本物とみていいだろう。



列の後に並んで、順番を待とうとしたら、案内係なのか、

その人に声をかけられて、事情を説明すると、家の中へ通された。


「すぐに来ますので」

そう言われて待つことにした。


室内は・・・怖い・・・


かなり待たされるかと思ったが、主はすぐにきた。

「お待たせしました」

中年の男性だ・・・惟子さんのお父さんか?


しかし、霊媒師らしい格好ではなくて、背広にネクタイをしていた。

普通の客だからか・・・


「はじめまして、惟子の父の、太郎です」

「いえ、こちらこそ、結果として、とんでもないことを」

「いえ、惟子のためにありがとうございました」

頭を下げられる。

そんな義理はない。


「話していただけますか?意味を」

「わかりました」

太郎さんは、意を決して話出した。


「元はと言えば、私の責任です」

「太郎さんのですか?」

「はい。私が惟子に余計な事を言わなければ・・・」

太郎さんの表情は、苦痛に満ちていた。




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