第1話領主さん
「「失礼します」」
「ああ。君達が勇者か」
「ええ。一応そう呼ばれていますね」
「はい」
「……」
「えっと…」
「…すまない。取り敢えず、会うことは決まっていたから会ったが、特に話すこともないような気がしてな」
…迷宮都市の領主がそれでいいのか…
「領主様発言よろしいでしょうか」
「ん?構わないぞ?」
「私達はお金も装備も国王様より頂いておりますので、領主様にして頂きたいことは何も有りません。また、移動中にこの世界に関する知識も教えて貰っているので、これから、実際に見たりしてみたいと思っています。なので、すぐにでも迷宮へと足を伸ばしてみたいです」
「…そうか。そういえば、君達は精霊と契約をしてるんだったよな。なら、ある程度のことまでは問題無い、か。よし。ギルドマスター宛に一筆書いておこう。少し待ってくれ」
「はい」
んー。何も話をしてないのに、優恵が全部やってくれてるから、すごい楽だ。
「…。取り敢えずこれでいいだろう。この国王様が書かれた勇者の証明の書類も合わせて、冒険者ギルドに持っていくといい」
「ありがとうございます。それでは」
「まてまて。宿泊場所はどうするつもりだ?なんだったら、この屋敷を使ってもいいし、家を用意させようか?」
「…そうですね…。流石にそこまでして頂くのは悪いので、自分達で宿を借りようと思います」
「…だが、…そうだな。此方の体面という物があるから、用意した家を使ってくれないだろうか?もう用意は終わっているし、家具なども全て準備は終わっている。悪い話ではないと思うのだが…」
「…そうですか…。そうですね。その家の中ではプライ…個人情報は秘匿されますよね?」
「ん?されるぞ?勇者達を盗聴するなんてリスクが多すぎるからな」
「そうですか。では使わせてもらいます。わざわざありがとうございます」
「じゃあ、メイド…はあれなのか。執事もつけよう」
「いえ、そこまでしていただく必要はないです。私も兄も執事をつけられるとかえって窮屈に感じてしまうかもしれませんので…」
「そ、そうか。それでお兄さんの方も構わないか?」
「はい。それでお願いします」
「では、外に馬車を用意させるから、待っていて」
「あ、領主様。迷宮都市の町並みを見たいので、歩きでいいでしょうか?」
「…構わないが、妹さんの方も構わないか?」
「問題ないです」
「そうか。ならば、そこまでの道筋を書くから少し待っていてくれ」
「わかりました」
やっぱ異世界に来たんだったら街とか見てみたいしな…。それに、何か馬車とかに乗って送ってもらうのは恥ずかしい?というか、そんな感じで嫌なんだよな。
「お兄様。今日はどうしますか?昼過ぎですから、どこかで昼御飯を食べるとして、その後は、冒険者ギルドに行きますか?それとも、一度貸してもらえる家に行きますか?」
「んー。そうだな。やっぱり、冒険者ギルドには行ってみたいから、冒険者ギルドに先に行こう。昼御飯はここでしか食べられなそうな物でも探そう」
「そうですね」
この世界に来てすぐに移動を開始したから、今まで食べてきたのは貴族などが使う携帯食のような物。と言っても、執事さんが作ってくれたんだけど…まあ、そのようなものしか食べていない。だから、結構楽しみだったりする。
そういえば、執事さんは何か勇者に対する嫌悪でもあるんだろうか?それとも、俺と妹にのみなのか…誰にも聞けないのが辛いな。次会う事があったらそれとなく聞いてみるか…。
「出来たぞ。まあ、これを見れば分かるだろう。昼は外で食べるのでいいんだな?此方で用意も出来るが…」
「外で食べたいので、今回は遠慮させてもらいます」
「そうか。まあ、何かあればここに来てくれれば対応するし、何もなくても来てくれて構わない」
「分かりました。ありがとうございます」
「ああ。じゃあ、もう行ってくれて構わないぞ」
「「ありがとうございました」」
「ああ」
思ったより気さくな人で良かった。見た目は結構あれだったからな。
「外に出たらどうしますか?」
「ん?あ、ああ。取り敢えず、人が多そうなところに行ってみよう。そこだったら食事が出来る場所もあるだろうから」
「そうですね」
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